第15話 寝る皇子、焦る
まえがき
新年明けましておめでとうございます。
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4日までは毎日更新します!
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ネールスロースが出来て2ヶ月半が経とうとしていた。
あの会議以降、皆はそれぞれの役割に沿って街のためにあくせく働いていた。
もちろんネルス以外は、であるが。
フレデリックは即日外壁を完成させた。
これには爆炎龍であるフランメも破壊するに時間が掛かると目を丸くして驚いていた。
鹿人族代表ヤックルは内壁と外壁の間に野菜の栽培を始め、少しずつだが成果が出ていた。
栗鼠人族リッキーが担当する果樹園はまだ実がなってはいないが毎日欠かさず世話をしていた。
犬人族のワンダはミノタウルス族が近隣の森から連れてきた牛たちの世話を見ていた。
ミノタウルスは牛の魔物だけあって牛と意思疎通が取れるらしく、お陰でネールスロースでは毎日上手い牛乳が飲めるようになった。
ギリーとヒョウガが行っていた多種族の勧誘だが、既に2種族が街の様子を見に来ていた。
一種族目はギリーの紹介でやってきたサテュロス。
ミノタウルスと同様に山羊の獣人ではなく魔物である。
頭に立派な角を生やし、丸っこい尻尾をお尻につけている。
魔物の中ではズバ抜けて頭が良いのが特徴だ。
一通り街を見終えた後は一度種族で話し合うと言って帰っていった。
もう一つはヒョウガが紹介した象人族。
彼らは2mを超えるミノタウルスより更に大きく、族長のゾオンに至っては3mを超えていた。
彼らは穏やかな性格だが、力が強く戦いになると負けることはない。
ただ身体が大きく致命的に足が遅いため、見つかってしまうと的になりやすいという弱点が存在した。
街に移住すれば外敵に怯えることなく過ごすことが出来る。
象人族が決断を下すのは簡単だった。
守ることを得意とする種族のため門番や街の中の見回りはゾオンを隊長とし象人族が担当することになった。
これでギリーとヒョウガの二部隊は共に狩りに専念出来ることとなった。
しかし肝心のネルスは余裕が出来た分休めと指示を出すなど相変わらずであった。
「くぅ〜。よく寝た。」
「ネルス様、帝都から使者だという方が来てます。」
「帝都から使者?ちっ親父め。視察団か何かを送ってくるつもりだな。面倒な仕事増やしやがって。」
いや、ネルス様ほとんど寝てますよね?と思ったがチュータロウは口が裂けても言えない。
獣人たちが今笑顔で生活出来ているのはネルスの力によるからだ。
「応接室か?今向かう」
ネルスが執務室に向かうと顔見知りの役人が立って待っていた
「おう、久しぶりだな。いきなりどうしたんだ?」
一方、伝令役の役人-カーソンは困惑していた。
開拓不能のロストアースに巨大な城壁を持つ街が既に出来上がっていること。
見たことのある獣人の方が多いが見たこともない種族もいる上にどう見ても魔物であるミノタウルス族など多種多様な種族が笑顔で過ごしていること。
そしてそれを作り上げたであろう人物が相変わらず眠そうにやってきたこと。
皇子がこの様子だとフレデリック様が陣頭指揮をとっているのか?
カーソンがそう考えるも仕方のないことだった。
しかし今は目の前の皇子の問いに答える方が先だ。
「はっ。ネルス皇子が領主へ就任してそろそろ3ヶ月となりますので、その様子を視察してくるようにと陛下のご指示であり、視察団があと2日の距離まで向かってきています。」
「そうか。で、視察団の団長は誰だ?」
ネルスはやはりそうかと思いながら、大臣あたりが来るのだろうしフレデリックにでも任せようと考えながらカーソンに問いかける。
「エレーナ様でございます。」
「はっ!?すまん。どうやら聞き間違えたようだ。もう一度頼む。」
「いえ、聞き間違いではございません。貴方様のお母上で皇后エレーナ様が代表でこちらへ参られます。」
これには流石のネルスも度肝を抜かれた。
いくらユニーク持ちだと言ってもエレーナが来るなどと微塵も考えていなかった。
「そ、そうか。こちらで歓待の用意をしておくので、おふく…いや母上にはそう伝えてくれ。」
「はっ。では私はこれで失礼します。」
ネルスは帝都を出る時にエレーナに挨拶をして来ていないことを思い出し、大変なことになったと焦っていた。
そしてなによりも…フランメという爆弾の存在を思い出したネルスは見たこともないような機敏な動きでフレデリックやフランメを探しに向かったのだった。
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