第9話 寝る皇子、街を始動させる


ミノタウロス族を配下に加えたネルスたちはその足で街の予定地へと向かった。


「ミノタウロスたちの許可もとったし、これで好きに街が作れるな。まずは城壁だな。どれぐらいの広さがいいと思う?」


「今で約600人だろ?これからも増えるかも知れねえがとりあえずは3km四方ぐらいでいいんじゃねえか?」


「そうだな。あまり広くても管理しづらいし、それぐらいでいくか。じゃあ頼むぞ爺。」


「全く人使いがあらい若ですな」


そう言いながら地面に手をかざし、出よと一言唱えるフレデリック


ゴゴゴゴと轟音を出しつつ、周囲の土が盛り上がっていく。

あっという間にネルスたちを囲むように高さ20mの壁が出来上がった


そして今度は壁に手をかざし、ギリーとの戦いでも使った鉄壁と唱える。

するとただの茶色い土の壁だったものが真っ黒の鋼鉄の壁に変化した。

まさき難攻不落。

この外壁を壊すにはユニークスキル持ちを連れてくるしかないだろう。


「ンモ!これは一体なんだンモ!」


あまりに大きい音がしたため、気になって様子を見に来ていたギリーたちが驚きの声をあげる。


「俺たちの街の外壁だ。こっちの方が門番もしやすいだろう?」


そう言いながらブームに話を振れば、ブームは困惑する。


「これだけの外壁があったら門番いらないんじゃないのかモ?」


「いやいや、誰か来た時とか困るから門番は誰かに頼むよ。じゃあおれたちは獣人たちを迎えにいくからギリーたちはここへ荷物を運び出しておいてくれ。」


ネルスはフレデリックに拠点作成を任し、リュークを連れて獣人たちの元へ向かうネルス。

その際に空を飛んだネルスたちを見てミノタウロスたちが騒いだのはご愛嬌。




獣人たちの村へ戻ると既に移住の準備を済ませて待っていた。


「待たせてすまないな!向こうで新たな住人を確保してきた。だから移住先にはミノタウロス族がいるが気のいい奴らだから仲良くやってくれ」


「ミ、ミノタウロス!それはまた強い魔物ですね。でも仲間だと思うと頼もしいですね。」


村は村長のチュータロウに任せることにして第一移住組と移動を始める。

リュークは村に万が一があったら困るので護衛として残ることとなった。


暗くなる前には無事移住は終了し、村も痕跡が残らないように破壊してきた。


「若、地下道を掘って飲料用と下水用の水道を川へ繋いでおきましたぞ。」


「あぁ助かった。これで水には困らないだろう。で、これは何の騒ぎだ?」


街では獣人やミノタウロスがワイワイガヤガヤとお祭り騒ぎの様相を呈していた。


「ミノタウロス族が狩に出てビッグボアとホーンディアを大量に持ち込んでくれましてな。獣人たちの中で調理の出来る者たちが宴会用の食事を作ってくれてるところですな。」


「いや、明らかにあんな奴らいなかったよな?」


ネルスが指差した方向にはギリーと仲良く盛り上がっている黒く頭から耳の生えたワイルド系の男がいた。


「あぁ。あ奴らはギリー達の知り合いらしくて、ギリー達の集落を見に来たらそばに大きな城壁が出来ているのを見て様子を見に来たようですな。」


「いる理由は理解した。ちなみに奴らも魔物か?」


「いえ、黒豹族という獣人の一種だそうです。獣人の中では速さにおいて右に出る種族はいない程だそうですな。」


フレデリックの説明を聞きながらギリーのもとへ向かうネルス


「ンモ!戻ってきたなンモ!紹介するンモ!黒豹族のヒョウガだンモ!」


「おう!世話になるぜ大将!俺たち黒豹族38名もここに住ませてくれや!」


「俺はネルスだ。住民が増えるのは大歓迎だ。ちなみに黒豹族は何が得意なんだ?」


「ミノタウロスがパワー型なら俺たちはスピード型だな!」


「わかった。ならとりあえずはミノタウロスたちと一緒に街の自衛団と狩りを担当してもらうか。んでその足を見込ん東のシュバーベンって都市にガルガロッソ将軍ってライオンの獣人がいるからその人に伝言を頼もう。」


「獅子の獣人か。それはまた面白そうな奴だな。」


「旧トランプ連合国の地域にいる獣人たちは皆俺の庇護下にあることを伝えてきてくれ。お前たち獣人の口から伝える方が安心するだろう。もちろん強制労働させられてた人たちも助け出したから安心してほしいとも。」


「わかったぜ。おれは長としてここを離れられねえから若い奴を3人ほど選んで一走りさせとくぜ。」


「よろしく頼む」


「おーい、ネルス!宴の準備が出来たみたいだぜ!皆領主様の登場を待ってるみたいだぜ」


ネルスがリュークに呼ばれついていくと、既に料理の多くが即席のテーブルに並べられ、前方にはステージまでもが設営されていた


「おおーネルス様がきたぞ」

「わーネルス様だ」

「ネルス様はやくはやく」


ネルスが姿を見せただけで周囲は盛り上がり、否応なしにステージ上に押し上げられる


「この街の領主ネルスだ。知ってるものも多いが帝国の第四皇子でもある。

だが、おれはここにそういったものに縛られない自由で強い街を作りたいと思っている。おれが必要な時は力を貸そう。だからお前たちも俺に力を貸せ。おれはここに俺たちの楽園を作る。」


「「うぉー!!ネルス!ネルス!」」

「ところでここの街の名前はどうするんだ?」

「ネルスランドでどうだモ?」

「それは流石に安直だろう」

「ならネルス様に決めてもらえばいいんじゃねえかモ!」


「街の名前か…。寝る皇子。怠惰…ネールスロースなんてどうだ?」


「ネルスっぽくていいじゃねぇか!」


「フォッフォッフォ。ネールスロース、よきかなよきかな。」


開拓不可能と言われたここ“忘れられた大地”に総勢646名、8種族からなるネールスロースが誕生した

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