青煙
時計の針はもうすぐ四時を指そうとしていた。
ジッ、と石が火花を打ち、ライターに火を灯す。その火を煙草の先にそっと移す。ふっ、と息をつくと、口から薄い煙が漏れる。1mgの軽さは、真夜中と早朝の狭間であるこの爽やかな空気にぴったりだと思った。煙を吐く。暗い夜の中で、遠くの山の端が瑞々しい青を滲ませている。灯の落ちた天球に再び明かりが灯る兆しだ。夏の川の流れのような風が髪の毛を揺らす。
風が止むのと一緒に目を開ける。青い青い夜の中で、街灯と指先の火種だけがオレンジに光って、じりじり揺れていた。煙を吐く。まだまだ暗い空を、青灰色の雲の影が流れていく。冷たい静寂の中で、空に透ける宇宙と自分とが線で繋がるような心地がして、胸が一杯になる。煙草を持つ手を眼前の空に翳すと、オレンジの灯から煙が細くたなびいた。煙は青に溶けていく。山の端、空の果てが段々と、一層瑞々しい色を透かす。ゆっくりと夜は明けようとしているというのに、永久に時が止まったような静かな青色の世界。天球の真ん中で
そうして、変わらず夜は静かだった。
短編 減゜ @D_Gale
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