第5話
同じ小学校だが学年は卓也よりも一つ下で、近所と言っても少し離れていたので、卓也はまいちゃんのことは知らなかった。
まいちゃんの両親や親族、友人知人、そしてもちろん警察もまいちゃんを探したのだが、一向に見つからなかった。
そして一週間が過ぎて、一部で諦めの声が上がり始めた頃、まいちゃんが見つかった。
まいちゃんの家からそれほど離れていない児童公園で泣いていたまいちゃんに、公園の向かいに住む主婦が気づいたのだ。
一週間行方不明だったと言うのに、まいちゃんの身体には特に異常はなかった。
しかし異常がなかったのは身体のほうで、身体以外に異常があった。
なんとまいちゃんは、顔の皮膚が全てはがされていたのだ。
おまけに皮膚をはがされた顔の上に、人形の顔が貼り付けられていた言う。
その人形の顔は、最初の事件の時によっちゃんの人形からはがされたものだと捜査の結果わかった。
つまり人形の顔をはいだやつと、まいちゃんの顔の皮膚をはがしたやつは、同一人物と言うことになる。
当のまいちゃんは、一週間前に自分の部屋にいたことは覚えているが、気がついたら児童公園にいて、顔が痛くて泣いていたという。
つまり行方不明になっていた一週間の間の記憶が全くないのだ。
もちろん犯人にもまるで覚えがないと言う。
あまりにも奇妙で猟奇的な事件。
日本中が大騒ぎとなった。
もちろん警察による徹底的な捜査が行われた。
卓也の家にも警察が聞き込みに来た。
当然二軒隣の変な男の家にも。
近隣一帯で警察が訪ねて来なかった家は皆無と言っていいのだが、隣の主婦は変な男の家に警察が来たから犯人で間違いがないと騒ぎ立てた。
自分の家にも来ていると言うのに。
それについては前回と同じく、同意する人とそうでない人とに分かれたようだ。
ただそれ以来警察が来ていないことを見ると、警察がその男を特に怪しいとは思ってはいないことになると思われた。
男も相変わらずにいつも家にいる。
それに気づいた隣の主婦が前にも増して騒ぎ立てたが、一介の主婦が騒いだところで事件には何の影響も変化もなかった。
そんな中、卓也にはどうしても気になることが一つあった。
まいちゃんの顔の皮膚がはがされ、そこにさっちゃんの人形からはいだ顔が貼り付けられていた。
そうなると問題は、犯人によってはがされた人形の顔が、まだ百はあるということだ。
犯人はその大量にある人形の顔を、一体どう使うつもりなのだろうか。
卓也にはそれが気になってしかたがなかった。
そんな折、卓也は件の男に出会った。
小学校から家に帰る途中の住宅街の狭い路地で。
卓也は怖くなって無視して通り過ぎようとした。
しかし男の目はずっと卓也をとらえていた。
そして男は卓也を見て。にまりと笑っていたのだ。
終
顔はぎ ツヨシ @kunkunkonkon
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