第4話
卓也は田舎の祖父に電話を入れてみた。
人形は無事なのかと。
「ああ、全然大丈夫だ。心配するな」
優しく祖父にそう言われて、卓也は安心した。
もともと事件は、卓也の近所でしか起こっていないのだが、それでも人形が大事な卓也は聞かずにはおれなかった。
ついに六件目の事件が起こった。
そして今回はこれまでの事件とはまるで話が違っていた。
個人の家ではなく、近所にあるそれなりの規模のおもちゃ屋が狙われたのだ。
店にいた店主がトイレに行っている間のほんの数分間で、百体近くあった店の人形すべての顔が、きれいにはぎとられていたのだ。
大半の人形は箱やショーケースに入っていたが、それらが見事に顔だけがなくなっていた。
箱やショーケースからとり出した形跡も一切ない。
そして防犯カメラを見たのだが、犯行のあった数分間だけ、その理由はまるでわからないのだが何故か防犯カメラが止まっていて、何も録画されなかったのだと言う。
ここにきて事件はほぼ怪奇現象、オカルト扱いになってきた。
マスコミもさらにヒートアップした。
もちろん警察も。
色々な検証が行われた。
その中でもし人形の顔をきれいにはぎとる技術を持った人、はぎとることに慣れた人がいたと仮定して、その人が百体近くの人形の顔をはぎ取るにはどれくらいの時間がかかるのかと言う検証もなされたが、結果は軽く数時間はかかると言うものだった。
犯人はそれを数分でやってのけたのだ。
そして犯行時だけ動かなかった防犯カメラ。
なんだかの操作をされた、何かの手を加えられたという形跡は全くないと言う。
「こりゃあ、お化けのしわざとちゃうか」
ワイドショーに出ていた芸人が受け狙いでそう言ったが、周りの出演者たちは半ば本気で受け取ってしまい、芸人が思っていたほどの笑いは起きなかった。
世間の騒ぎの中、例の男は相変わらずで、隣の主婦も相変わらずだ。
一向に進展も変化もない。
しかし父も母もそうなのだが、卓也も家に人形がないため、それを他人事のように見ていた。
ところがある日、事件が起きた。
同じ小学校に通う一人の女の子が突然、自分の家から行方不明になったのだ。
両親、特に母親が近所中に聞き込みをしていた。
もちろん卓也の家にも来た。
まいちゃんという名前だった。
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