第15話 自己紹介フォーマット

 自己紹介の時間があった。

 参加者はじぶんをふくめて八人だった。

 そして自己紹介の内容は、毎回、同じ自己紹介フォーマットがあった。

 その自己紹介フォーマットというのは、まず名乗ること。これは本名でも、あだ名でも、ハンドルネームでもなんでもよく、とにかく今日呼ばれたい名前を名乗る。

 それとこのサバゲーへの参加回数。

 そして、参加動機。

 かんたんでいいし、一言でもいい。熱血して語ってもいいけど、いずれにしてもコンパクトに。

 あとは、あれば意気込み。

 その四つぐらいを順番に発表してゆく。

 はじめは笹崎さんだった。

「笹崎です、今日で三回目です。異能力設定サバゲーは友人に教えてもらって、参加するようになりました。えー、よろしくお願いします」

 よろしくお願いしまーす、と、みんなで一斉に会釈する。

 次に二十歳ぐらいの男のひと。

「アケビといいます………ええっと、あ、大学学生です。で、ええっと………なんだっけ、参加回数は七回目です………よろしくおねがいします」

 よろしくお願いしまーす、と、みんなで一斉に会釈する。

 三人目は女のひとだった。たぶん、二十五、六歳。髪が赤い。

「キキです、今日で、二回目です。この髪の色をみてもらえれば、わかると思いますけど、燃えてまーす」

 はは、と笑いがあって、四人目。

 今度も女の人だった。二十歳ぐらい。鼻のひくい人だった。

「カーブです、あの、まがるカーブです。高校のとき、野球やってて、カーブが得意だったんでー………っふ、あ、でー、えっとね、今日は四回目の参加です。カーブと名乗ってますけど、まがったことはキラいです! というわけで、よろしくおねがいします!」

 よろしく、と、一部のひとがキレよく返す。

 五人目は男の人だった。三十五、六歳。身体が大きい人だった。

「チャンキヨです。あー、じつは公務員やってます、はい。異能力のサバゲーは、二回目です。銃でやるサバゲーは、何年かやっててー………ます、はい。けど、最近は、いつものやってる仲間もみんな歳とってきて、時間もあわなくなってきて………まあ、そういうのもあって、あたらしいタイプのサバゲーにも参加してみようと思って、今日は来ました。よろしくおねがいします」

 はーい、とみんなで声を返す。

 六人目。身体の細い男の人だった。歳はほんとによくわからない、二十歳にも見えるし、四十歳にもみえる。

「ボーといいます………ネット上でもボーと名乗ってます。異能力サバゲはー、世間でまだ、ほとんどやってない頃からずっと参加してます。でも、つよくはありませんね………そうですね、今日のことはブログとかに書くかもしえませんが、みなさんの顏とか、名前とかは書きませんからー………ええっと、よろしくおねがいします」

 しまーす、と、若干、部活の省略あいさつみたいになってきた。

 七人目は女性だった。うちの母親より、少し下ぐらいの人だった。そして、うちの母親が読むファッション雑誌に出て来るモデルみたいに綺麗な人だった。長い髪は後ろでしばっていて、手足も長い。

「キシです。今日は、ちょっと取材っぽい感じで参加してます。よろしくおねがいします」

 よろしくおねがいしまーす、と、みんなで答えた。

 そして、最後にじぶんだった。

「………サカサカ………です、初参加です………このサバゲーへは………運動のため………健康のために参加しました。ケガがないことを目標にやっていこうと思ってます。よろしくおねがいします」

 おもしろみもなく、ぬるりとした自己紹介をする。

 そして、みんなからは、しまーす、と、あの部活の省略あいさつみたいのを返された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る