古の女神さまのLEGEND装備を手に入れたので肉を焼く

加賀山かがり

ダンジョンの最奥で喰う飯は最高だぜ!!

 突然だが、俺たちは今ケンタン=ダンジョンの一〇八階層まで到達した!


 このケンタン=ダンジョンには超古代の遺物とうわさされるお宝があるって話だ!


 このドデカイ扉のドアの向こう側にいる大ボスを倒せば、それが手に入るぜ!


「いくぞ!」


「おう!」


「いくわよー!!」


 俺たち三人はこの国でも五パーティしかいない最上級の称号、『Aクインティプル』まで辿り着いた実力者だぜ!


 三人でドデカイ扉を足蹴にして、派手に開ける!


 パーティーの時間だぜぇ!!


 そこに奴がいた。


 一つ目の巨人、サイクロップスだ。


 デカい!!

 ドデカイっ!!


 身長五メートル、体重は多分、八〇〇キログラムくらい!

 何も身に纏っておらず、局部丸出しで、石で作った棍棒を握っている。


 すげぇ……、マジでけぇな……。


「ちょっと!? なんで勃起しているのよっ!?」


 そう体のデカさもさることながら、勃起したナニのサイズがとてもデカかった。


 ちょっと感動すら覚えるデカさだ。馬並みなんてもんじゃねぇ……、ナニが馬くらいデカいのさ。


「乙女に何を見せつけているのよぉ――!!」


「乙女なんてガラじゃねーだろ、おまえよぉー」


 俺の仲間の魔法使い、メレアグラスはいい女だが、乙女ってガラじゃない。だから思わずツッコミを入れてしまった。


「いいの!! いくつになっても女は乙女なのよ!! 四十を超えても五十を超えても六十を超えても、女子なの!! 乙女なのよ!!」


「へーへー。分かりやしたよ」


「おいっ!! 呑気してっと潰されるぞ!!」


 もう一人の俺の仲間、戦士のワギュウが叫んだ。


 見れば、でけぇナニしたサイクロップスが石の棍棒を振り上げているではないか!!


 棍棒を振り上げてるのかナニを振り上げてるのか分からんけどなっ!!


 直後、ズガンッ!! と石の棍棒が降ってきて、地面を抉った。


「おわっ!? すげー力だ!!」


 その一撃で地底は大きく揺れた。


 ケンタン=ダンジョンの外まで届くほどに、揺れた。惜しむらくはメレアグラスに揺れるほどの胸が無かったことだ。残念。


「うぉぉぉ!! いくぜ、俺のガンエン=ソード!! ヒレスラッシュ!!」


 気合を入れて、飛び掛かり、最上級武器であるガンエン=ソードによる一撃をお見舞いしてやった。


 お見舞いしてやったのだが……。


「くそっ!? コイツ皮膚が硬すぎるだろっ!? どうなってんだよ!?」


 ドリアンの皮くらい硬い被膜によって弾かれてしまった。


 くそぅ、俺の必殺の一撃が、必殺じゃなくて、九分九厘殺技になっちまった!!


 しかし――!!


「硬いってことはお前の出番だぜっ!! 行けっワギュウ!!」


「いよっしゃぁ!! まかせなァっ!!」


 俺と入れ替わるようにワギュウが大きな大きなハンマーを振り上げて、サイクロップスへと一撃をくれる。


 ズドンッ!!


「決まった!! アイツのスーパーパイナップルハンマーに掛かればあのくらいの硬さどうってことないぜ!!」


 俺が勝利を確信してそう叫ぶと同時に、

「いやっ!! ダメだった!! 肉質が硬すぎる!! 一発じゃ無理だ!!」

 ワギュウが後ろへと跳ね跳びながら叫んだ。


「なんだとっ!? パイナップルで叩いて砕けない肉があるのか!?」


「こんなこと初めてだぜぇ……」


「仕方ないっ。行け、メレアグラス!! 超すごい火炎魔法でアイツを焼き払えっ!!」


「仕方ないわねっ、いくわよM9フレイムスロウアー!!」


 ゴォォォ!!

 だがしかしっ!! こんな狭いところでそんな強い火炎魔法を使うと、こっちもちょっと大変だ!!


 そうして俺たちとサイクロップスとの死闘は三日三晩続いた。



「よしっ!! 今だっ!! ブターローストストリーム!!」


 俺の第二の必殺剣が疲弊したサイクロップスの喉元へと直撃する!!


 ぐぁぁおあぉぉぉぉぉ!! と大声を上げてサイクロップスがズドンッ!! と地面に倒れた。


「い、いやった……!! 勝った!!」


「勝ったぞっ!!」


「勝ったったったったったわっ!!」


 俺たちはついにケンタン=ダンジョンを史上初めて踏破した冒険者になったんだ……!!


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 そしてボスモンスターを倒したご褒美ともいえる巨大な宝箱を開く。


 そこには白く美しい金属鎧と、金属製の盾と、それからやや刃渡りが短めの剣が入っていた。


 分かる!! 分かるぞ!!


 伝説の女神さまの鎧!!

 伝説の女神さまの盾!!

 伝説の女神さまの兜!!


 そして伝説の女神さまの短剣!!


「うぉぉぉぉぉ!! お宝だー!!」


 そこで、俺たち三人の腹がぐぅとなった。


「なぁ……、この兜ダッチオーブンになるんじゃねーか……?」


 そんなことを言いだしたのは果たして誰だったのか……。


「この鎧も上手く火に掛ければ熱が中に籠って中々具合の良い屋外用のオーブンになりそうだな」


「この盾なんて、肉焼く鉄板としては最適じゃない?」


 気付いてしまったらもう手を止められなかった。


 倒したばかりのサイクロップスから色々な部位を切り取ってきて軽口抜きをしてから組み上げた女神さまの装備品オーブンに並べて火を通す。


「なあ、ここって喰えると思うか?」


「まあ豚とか馬とかは食べられるし、ちゃんと火を通せばいけるんじゃねーか?」


 伝説の女神さまの短剣を器用に使って、ワギュウがサイクロップスのペニスを切り取った。


 メレアグラスは怪訝な表情をしていたが、それでも水の魔法でしっかり洗浄してくれた辺り、アイツもやっぱり腹が減ってたんだろうな。


 そして、じぅじぅと肉から脂がしたたり落ちて音を立てだす。


 鎧の中で蒸し焼きにしていた腕の肉も、兜の中でじっとりと焼いていた尻の肉も、盾の上で焼いている胸の肉と怒張のお肉も、良い感じに焼けてきた。


「よっしゃ!! じゃあいただきまーす!!」


 俺たちはそれぞれ、フォークで肉を刺して口へと運ぶ。


「まあまあ旨いな」


 俺が食べたのは尻の肉だ。


 男の尻を追いかける趣味はないが、この肉は中々脂が乗っていて旨い。

 あんなに筋肉質そうだったのに、こんなに柔らかくなっているとは……。


 もしやパイナップルの効果か?


「こっちは中々塩気が効いてるな」


 ワギュウが食べたのは腕の肉。多分そこは俺がこのガンエン=ソードで何度も切り付けたから、塩分が事前に浸透していたのだろう。


 そこが旨いのは多分俺のおかげだ、感謝しろよ。


「こっちは、あんまりおいしくないわ……。というかちょっとくさい……」


「まあいくらなんでも真っ先に食べるもんじゃないからな、それは」


 メレアグラスが食べた場所は言わなくても分かるだろうが、サイクロップスのペニスだ。


 戦いの最中でもグチグチあのデカいナニに対して文句を言いまくっていたのに、いざ食べるとなるとまっさきにいくあたりスケベな女だぜ。


「どれ、俺にもくれよ」

「俺も食うわ」


 俺とワギュウもメレアグラスが焼いたペニスにフォークを指して、パクリと口にする。


「確かにこれはちょっと臭いな」

「歯ごたえがあるのは良いな。でもクサイばっかりで味はあんまりせんな」


 だけど、女神さまの伝説の防具で焼く肉は最高だぜ!!


 P.S.後日、俺たちは呪われた

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古の女神さまのLEGEND装備を手に入れたので肉を焼く 加賀山かがり @kagayamakagari

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