いつものそばと、うどん

どら焼き

第1話 いつものそばと、うどん

 昭和58年


 その街は、1つの工場で成り立っていた。


 工場では、若い主婦のパートさんがせわしなく動いていた。


 洗濯機


 掃除機


 テレビ


 そして、当時の憧れVHSのビデオデッキ


 丸い蛍光灯


 実は、工場の従業員には製品3割引の特典がある。


 従業員が、製品の注文を受けて会社にいうと、3割引で販売する制度もある。


 従業員たち主にパートさん達は、親戚が結婚すると聞けば自社の白物家電と呼ばれた電機製品を売り込んだ。


 この工場は、本社の営業専門社員よりも製品売っていたらしい。


 キーンコーンカーンコーン!



 17時の鐘がなる。



 主婦達パートさんの帰る時間だ。



 毎日洗濯機を組み立てるのにはなれている。



 だが、慣れているのと、疲れないのは別!



 帰る家には、お腹を空かした子供が待つ。



 パートさん達は、帰り道に揚げ物屋による。



 ショーウインドーに並ぶ、真っ白な衣の状態で、アジ、ちくわ、ごぼう、ソーセージ……などがトレイに並んでいる。



 しかし、パートさん達の1番人気は、コロッケ!シンプルなジャガイモだけのコロッケである。


 家族6人!


 パートさん達は、だいたいコロッケ20枚買っていく。


 店員

 「コロッケ20枚ですね。揚げますか?」


 そう!店の前で、その場でコロッケを揚げてくれるのである。


 アツアツのコロッケを、二重の茶色の紙袋に入れて、渡してくれる。



 そして、疲れた身体にムチを打って、パートさんは、家に帰る。


 「ただいま。」


 「母ちゃんごめん。お米が少なくて、少ししか炊けなかった。」


 しまった。朝、気づいていたのだが米屋で買って帰るのを忘れてしまった。


 財布を持って、走って商店街に行くが米屋はもう閉まっていた。


 朝はパンにしよう。


 小さな、商店に行く。


 食パンは手に入った。


 だが、米はない。



 しかし棚には、


 「赤いきつね」


 「緑のたぬき」


 があった。


 5個ずつ10個買った。


 子供がおかわりするのも、計算しないと。



 家に帰ると、夫が帰って来ていた。


 「ごめんね、米屋さんしまっていたの。」


 「いいじゃないか、お!「赤いきつね」か!」



 「父ちゃんの学生時代な、きつねにコロッケをのせて、食べてたんだぞ!」


 「へー、なんで?」


 「お腹空いた時な、これが結構お腹膨れるんだな。うまいんだぞ~」



 こんな、会話が食卓でされていた昭和時代


 しかし、バブル時代がやってきたと思えばすぐに終わり、混乱の年末にもコンビニで売っていた「緑のたぬき」


 商店街が無くなってしまい、そば屋がなくなっても、年末にはスーパーにいてくれた

「緑のたぬき」


 会社が、競争力をつける為に海外に工場を作って、パートさん達の仕事が減ってしまった寒い時も、あったかい「赤いきつねコロッケ入り」


 会社が、女性社長になってパートを大事にすると言っていたのに、工場が無くなって当然の発言があった、真っ青な日にも、生きている暖かさを、くれた「赤いきつねコロッケ入り」

 

 会社が、なくなっても!


 バイト先のオーナー店長のセクハラで、クビにされても!


 裏切らずに、あったかい美味しさをくれる、


 「赤いきつねコロッケ入り」



 ありがとう!


 両親は元気で、ときどきコロッケ入れて、

 食べてます。



 電機工場は、デカいスーパーになってしまったけど、まだ揚げ物屋さんは営業中です。

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いつものそばと、うどん どら焼き @Drayaki

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