フェルメールの「合奏」をお持ちでしょう
マクレガー卿の顔がいっきにこわばった。
マルケスは問い詰めるように言った。
「You have “The Concert” of Vermeer. Am I correct?」
(あなたはフェルメールの「合奏」をお持ちでしょう。違いますか?)
マクレガー卿の目は剥いたまま固まった。
驚愕だ。
だが抵抗しなければならない。
力をすべてそぎ落とされた男は、リングを降りると決めるだけで御馳走が待っているのがわかる。
打たれ続ける必要はない。
だが、御馳走に手をつけたら最後隠し持っていた禁断の宝を失う。
「…I don’t know what you talking about」
(あなたが何を言っているのかわかわらない)
マルケスはマクレガー卿を見据えた。
「Yes, you do. Listen carefully Lord McGregor」
(いや、あなたは持っている。よく聞きなさい。マクレガー卿)
「It’s the stolen painting from Isabella Stewart Gardner Museum in 1990.
Whole world is still looking for that master piece」
(それは1990年にイザベラ・ステュアート・ガードナー美術館から盗まれた絵画
だ。世界中が未だにその傑作を探している)
マルケスは続けた。
「If you don’t let go this historical treasure, you will be broke! You know
that. Besides, maybe BBC will be very interested. British noble kept stolen
Vermeer」
(もしその歴史的な宝を手放さないのであれば、あなたは破産だ。わかってるでし
ょう。しかもBBCが異常に興味を持つことでしょう。イギリスの貴族が盗まれた
フェルメールを持っていたことにね)
マクレガー卿はマルケスを精一杯睨みつけた。
「Are you trying to threaten me?」
(私を脅そうとしているのか?)
マルケスは平然と答えた。
「Threat? No, sir. I’m just saying rumor is very dangerous thing」
(脅し?いえ、違います。私はただ、うわさというのはとても危険なものだと言
ってるんです)
「You lose your social credit, your business, your friends, your family. And
whole medias will chase after you」
(あなたは社会的信用を失う。仕事、友人、家族、そしてすべてのメディアがあな
たを追い回すでしょう)
マクレガー卿は捕らわれたように、じっとマルケスの話を聞いている。
マルケスは大げさに両手を広げ、舞台役者が歌でも歌うように続けた。
「Not just medias, Scotland Yard comes next. And Interpol, FBI, of course
It’s robbery case in United States」
(メディアだけじゃない。スコットランドヤードが動き出す。インターポール、
FBI、当然です。合衆国の盗難事件ですからね)
「So tell me. How do you explain that why you have ”The Concert”?」
(では教えてください。どうやってあなたが「合奏」を持っていることを説明する
んですか?)
マクレガー卿も抵抗する。
「Only! If I have ”The Concert”!」
(もし!私が「合奏」を持っていたらの話だろう)
マルケスはたたみかけた。
「It’s a very simple question, Lord McGregor. If you keep “The Concert” You’re
gonna end up, writing your book in jail. ”How did I keep Vermeer”, or “Stolen
Vermeer and British Lord” something like that」
(これはとてもシンプルな問題なのですよ、マクレガー卿。もし「合奏」を所持し
続けるなら、あなたは刑務所で自伝を書くことになる。「どうやって私はフェルメ
ールを所持したか」「盗まれたフェルメールとイギリス貴族」などね)
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