エピローグ

「…………んあ」


 目が覚めると視界には、見覚えのある天井。そして、僕の身を支えているのは、所々ほつれ、ふかふかとは言い難い感触の、年季のあるソファ。

 ドアの反対側で、何か運んだり、移動したりと、撤収作業している物音が聞こえる。

 どうやら、部室で意識を失ってしまったらしい。起きていた時の最後の記憶を手繰り寄せていく。確か、舞台が終わって……。


「あ! 晴君が起きた!」


 部室に入ってきたのは綾芽だ。


「劇が終わったら急に倒れて寝ちゃうんだから、もーびっりしたよぉ」

「今、何時?」

「今? えーっと、は十五時だよ」


 だいたい三十分程意識を失っていたのか。思ったより、時間が経っていない。

 確か、文化祭の終了は十七時だから、まだ間に合う!


「他の部員は、片付けしてるのか?」

「うん、でももうほとんど終わってるよ」

「そうか、ありがとう!」


 そうして、僕はソファから跳ね起きて部室から飛び出す。


「ちょっと晴斗? 急にどうしたの?」


 そして、わき目も振らずに走り出す。


 目指す先は長く艶のある黒髪、凛とした佇まいの……いた。


 見てろよ信長! お前を飽きさせないくらい、さいっこうの青春をしてやるっ!


「隅田さんっ! この後僕と一緒に、文化祭回りませんか?」


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憧れの人が俺の妄想に勝手に現れるもんだから、それを演劇にしてやろうって話 潮汐 @tyo-seki

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