全てを破壊せよ、怪獣

リベレイト・プラン改、発動

久しぶりに乗った電車は、見知った景色ではなかった。それもそうだ。いつの間にか季節は真冬になっていたし、そもそも10時半という時間帯の電車に高校生が乗っていること自体が特殊だった。


心なしか乗客も私の方を横目で見ている気がする。


そこそこ混んでいた車内でリュックを背負ったまま突っ立っていたらある駅で入ってきたおじさんにスマホで頭を叩かれた。


「邪魔、カバン」


私はそっさとカバンを下ろしたが、おじさんはスマホに忙しそうでこちらにはもう構っていなかった。


(は?それだけを言うために頭叩く必要あった?)

脳内ではこの100倍ぐらいの罵詈雑言が巡った。拳が震えた。結局何もしないまま駅を降りた。


件の「今日休んだら留年」の授業の途中で教室に入った。クラスの反応は記憶を消した。授業後、先生に呼び出された。嫌な予感がしたので精神が防御モードに入る。


「30分以上の遅刻だから本来は欠席なんだけど、わかってる?休み過ぎてるの自覚してね。」


と言われた。


机に帰ると防御モードが解除された。

(来たんだから怒るなよ、行きたくなくなるだろ)

目についた机の上のプリントをポケットで握りつぶして粉々にして少し発散した。


昼になると、特に弁当も持ってきていなかったので購買に行くことにした。


途中で写真部が勧誘していた。この季節にも勧誘しなきゃいけないなんて可哀想な部だな、と思った。不運続き、アウェーな今日の中で見下せる相手がいるだけで安心する。


購買で何か買った後、スカートのポケットに入っているくしゃくしゃのプリントを可燃ゴミの缶に入れた。


これが間違いだった。5限の授業プリントがそれだった。5限になって、みんなが見慣れた、さっき捨てたプリントを取り出して書き込み出した時、精神的な緊張は頂点になった。あれは今日配られたプリントだった。不登校だから忘れましたが効かない。今日もらったプリントを無くすわけないから隣の人に見せてとも言えない。


デッドロックだ。


しかも授業こそが、予習ノートを怪獣ノートにしてしまった英語の授業そのものだった。机の上に怪獣ノートがあった。奇しくも儀式が始められる状態が整っていた。


(お願い、インナービースト!)


パラパラパラ

「「フェイズ ワン」」


心の奥底では何も起こらないと思っていた。でもそうするしかなかった。そして、それインナービーストは応えた。

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Inner Beast 積雲 @sekiun_creation

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