第12話 罪人達
叶わない理想と比較していても仕方がないので、考えるのをやめ、女性の方を見る。
女性は何かの装置を背中に装着しているようで、機動鎧を使うために必要らしいその装置の機能を阻害しないためか、背中の広く空いた肌着一枚になって機械鎧に乗る。あんなに軽装では、どこかに金属が掠っただけでも怪我をしそうだが、女性には一切気にする気配がない。
足は、膝までは人の関節と一致しているが、下腿がやや長く、足先まで下腿に収まるようになっている。
前側半分が蝶番で開いた機動鎧の足に足先までを嵌めたあと、蝶番を手動で閉めて、ロックを掛ける。その次に中空の腕部に腕を通し、頭の大きさをゆうに越す大きいヘルメットを機動鎧のアームを使って被り、短めの胴体は、前部が完全に分離しているので、外していたそれを地面から拾い上げ、胴体にうまく嵌め込んでロックを掛ける。これで、機動鎧を装着できたということになるらしい。動作確認のように機動鎧は軽く飛び跳ね、空を殴り、伸脚する。
重いシリンダーの音から既に重厚感を感じるが、気になっていた、ふくらはぎと肘と背中についたスラスターは基本動作だと使わないらしい。スラスターを使ってみて欲しいと頼むと、女性は了解してくれる。機動鎧の左胸にあるスピーカーから声が聞こえる。
機動鎧は、行くよ、という声を出した瞬時に姿を消し、僕の真後ろに立つ。その動作は速すぎて全く目で追えなかった。
「大きけりゃ力は強いが
機動鎧に乗る前とは口調も声色も変わった女性の様子にびくびくしつつ、確かにそのとおりだと思ったので縦に首を振る。すると女性は続けて言う。
「お前も着てみたいか?」
着てみてもいいのか?
「ぜひ、着てみたいです!」
思ったより大きな声を出してしまったが、乗ってみたい気持ちは強い。だって多分この世界で唯一の、人型のロボットだろう。機会があるのに乗らない手はない。
すると、どこから出てきたのか、後ろから不良のような、五人くらいのタンクトップの集団が出てきて、僕を取り囲んだ。
そのうちの、僕の正面に立っている褐色の肌の男が、タンクトップを脱ぎながら後ろを向く。分厚い僧帽筋と上腕三頭筋が輝いているが、それよりも、背中一面を覆う、いくつか穴の空いたシャコの殻のような形の金属板が目につく。
「これが何だか分かるか?」
僕の左側に立っている男が顔を寄せて言う。これはあの機動鎧を着るためにつける装置だろうと思いそう言うが、男は続けて、
「これは外そうと思っても一生外せない、国に屈服した罪人の証さ。」
と言った。かっけえ。
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