第13話 蟲

 男がなんかかっこいいことを言っていて、巨大ロボット好きとして昔のアニメやなんかを見漁っていた僕には、なんとなく言わんとすることは分かる。つまり、なんか成功率の異常なほど低い手術かなんかをさせられた罪人たちが、戦場で唯一無二の部隊になって活躍する系のヤツだろう。格好いいな。

 ただ、現実でそれに入るとしたら、まず罪人になって、なんかしらの条件で機動鎧の舞台に入ることになり、しかも成功率の低い手術を受けなきゃいけないわけだから、そんなことが出来ようもない。かといって正規兵にこんな危ない機動鎧を装備するわけがないだろうし、しかしこれを着れれば格好いいだろうなとは思う。


 「で、なぜ俺らみたいに改造された人間が必要なのか分かるか?」

「それは、敵もこの鎧を使うからでは……ないでしょうか。」


 相手が使う。だから自分も使う。というのが抑止力の定番だろう。逆に相手が使わないなら自分もコスト削減のためには使わない選択をするのが自然だ。と思いつつ左の男を見るとなぜか顔を赤くしている。


「……ちげえよ!」

「え?」


 と僕の口からは腑抜けた声が出る。確かに『蟲』についての知識は無いし、機動鎧についてもよく知らない。しかし怒鳴られるようなことを言ったのか?……命がけで戦っているのにその相手すら認識されていないとしたら怒るのも当然か。ああ、失敗したな。めちゃくちゃ怒られそうだ。怖いし、帰りたい。


「あ、やっぱ、帰っていいですかね。」


 全く空気が読めてないとしか思えない言葉が口から出る。空気がやや白けるが、空気を読んでいたらそのまま手術されて、多分失敗して死ぬので、どうにかこの場から離れないといけない。から今の発言は仕方なかった。

 だけど、そうも上手くは行かないらしい。


「なんでお前ら・・・がここにいるのか知らねえが、お前、『蟲』だよなあ。」


 なんか暗い雰囲気をした片目隠しヘアの男が、粘っこい言い方で言う。


「『蟲』?なんのことだか。」


 なんのことだか、本心からさっぱり分からない。


「この様子だと、確かに自分では分かってないらしいが、お前は確かに『蟲』だよ。」


 機動鎧に乗ったさっきの女性が言う。さっき優しくしていたのは罠だったのか。僕はいつの間にか敵の中にいたらしい。いつの間にか逃げられないように周囲を包囲され、下手に身動きが取れない状態にある。


「『蟲』ってなんですか?」


 まずそれを聞いてもいいだろうか。何か逃げ出すための突破口が見えるかもしれない。

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