第4話 神視点1
僕は神だよ。人の意識を朦朧とさせて思うがままに動かすことなんて大して難しいことではない。ただ、君を利用するために、こんな脅しをしてしまったことは申し訳なく思うよ。これで僕は悪神になってしまった。いや、嘘だ。つい10044.3422820741..
‥
‥‥‥
‥秒と少し前になったばかりだ、と言っている間に秒数は一秒単位で過ぎていく。時間の無駄だ。君もまったく悔やんでるだけじゃなくて目を開けて僕と話をしようよ。
「目を開けなくても、どんな姿勢になっても、どうせ僕の目の前に座り続けるんだろうに。」
そりゃそうさ。僕の方が君の体や魂なんかよりずっと上質な存在だからね。だって君、知ってるかい?僕がこの部屋の光を君より上質にすれば、君の視界は僕を除いて真っ白さ。この部屋の重力の存在を君より低俗にすれば、君の言う、その“姿勢”とやらも、すぐに何だかよくわからなくなる。
僕の方が強い。それは分かってるよね。だって僕が口を動かさなくても僕の伝えたいことは君に伝わるし、君がどんなに口を動かしたって、そこから発せられる音なんて僕には聞こえない。あまりに君の悲鳴がうるさいんで、ミュートにしちゃったからね。
もちろん、君には自分の悲鳴が聞こえているだろうけど、それが僕の声を妨げることができないなんてことは、君がよく分かっているはずだ。君が今、黙ってしまったことからもそんなことは推測できるし、君がもしそのことに気付かなかったとしても、僕は君に“分からせる”ことだってできる。その時は、バツとして君の魂を少しだけ撫でてあげるよ。
君のような脆弱な魂には、僕が撫でるだけで激痛が奔るらしいから、ぜひ、体験してみたければ言ってくれるといい。
そうだ、君の体より、光の方を上質にしよう。ほら、明るくなっただろう。なんちゃって。
何で君は座ってるんだい?君が座っていられるのは、僕が温情でこの部屋に床を置いてあげたからなのに。恩を仇で返すようなら、試しに、この床を君より低俗にしてみようかな。
おっと、その前に重力を消すのを忘れてた。君はどんどん落下しちゃうね。僕もどんどん落下する。
でも良かった。これで重力を消す手間が省けた。この場所に地面はないからね。どう?楽しいかい?
…そんな顔をするなって。強情な子は僕もついからかってしまいたくなる。ほらほっぺたをつついてあげよう、
と思ったけど、間違えて指が魂に刺さってしまった。
せっかく法を犯してまで盗んできたモノだけど、こんな穴が空いちゃったらもう使い物にならないな。
元の場所に返しに行くのも癪だし、僕の世界に捨てておこう。子どもの誰かが勝手に美味しく食べてくれるだろうからね。
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