あなたにメリークリスマス!
夕日ゆうや
クリスマスプレゼント!
賑々しい電車のホームに立っている。
ホームに入ってくる電車。
風圧が髪をなびかせる。
電車のドアが開くと、学生が三名みえる。
何かの話で一喜一憂する学生。
俺もあんな時があったな。
賑々しくはしゃぐ学生。
ため息を吐き、仕事に向かう。
会社の入り口前にはツリーが飾ってあり、今年のクリスマスの終わりを告げているようだった。
カードをかざし、仕事場へと腰を落ち着ける。
学生の頃はみんなでバカ騒ぎしたクリスマス。だが、いつも通り仕事をし、なんならいつもよりも仕事が多いまである。
年末年始ということもあり、仕事はピークを迎えている。
こんなに苦労するのなら年末年始も働かせてほしいと思うのは俺が社畜だからだろうか?
夜は疲れた身体をアルコールで忘れさせ、朝は栄養ドリンクを飲む。そんな肝臓に悪いことをここ数年続けている。
心を押し殺し、仕事に専念する。
いつの間にか今日も終わっていた。
あとは書類をいくつかまとめて、明日に備える。
「お疲れ様でした。お先失礼します」
そんな声が聞こえ、俺は手をひらひらとさせる。
まだ残業がある。
残った仕事はできるだけ早く片付けたい。
自分の分の仕事をやっていると、隣の席の
「あら。まだ残業していたの?」
「ああ。これを明日までに終わらせたくてな」
カタカタとキーボードを叩きながら、応える。
「ふーん」
興味があるのか、ないのか、分からない返事を聞く。
そのまま会話もなく会社を出ていってしまった。
ついに一人になった。仕事と向き合う。
寂しいなんて言ってられない。
しかし、「お先に失礼します」も言わないなんて加藤らしくもない。
しばらくすると加藤が姿を現す。
「ふふ。クリスマスプレゼントよ」
そう言って手渡してくる包装された箱。
「え。俺に?」
加藤は気遣いができてみんなのお姉ちゃんといった感じだ。男性からの指示も熱い。
そんな彼女がどうして俺に?
「そうよ。私、頑張っている人の味方だもの」
そう言って隣の席のPCで作業を始める加藤。
「これ開けていいか?」
「ダメよ。家に帰ってからのお楽しみ♪」
イタズラっぽく笑う加藤。
こんな顔もするんだな。
「そうだ。このあとどこか食べに行かない? 明日は土曜だし」
「いいね。サシのみでもするか?」
「ふふ。チキンがでるところがいいわね」
加藤とお食事。それだけでテンションがあがり、先ほどまで嫌気がさしていた仕事にも打ち込むことができた。
仕事を終えての一杯は格別だ。
「ごめんな。俺、プレゼント用意できなくて」
「いいのよ。こうして一緒に食事ができるのがプレゼントよ」
かっと顔が熱くなるのを知覚する。
「その表情いただき!」
スマホでカシャッと撮る加藤。
「あ。こら」
「いいでしょう? このくらい」
可愛く笑う加藤。
そっか。彼女にはこんな一面もあったんだ。クールビューティーな印象はもはやない。
「その写真、部署のもんには流すなよ」
「はーい。分かってます」
ビールを飲んでいるせいか、いつもより子供っぽさを見せる加藤。
「酔っているのか?」
「酔ってませーん」
酔っているな。
食事を終えたあと、ベロンベロンになった加藤を自宅のアパートまで送り届ける。
俺も家に帰り、プレゼントを開けてみる。
手紙も添えてあった。
「ふ。あいつ、可愛いところあるじゃないか」
俺はプレゼントと手紙を大事にしまうと、シャワーを終え、ベッドに寝転ぶ。
今日はクリスマス。いい夢が見られた。
すっと眠りに落ちる。
あなたにメリークリスマス! 夕日ゆうや @PT03wing
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます