コメンテーター

水鏡宰

喫茶店にて

 二十世紀の偉大な建築家、フランク・ロイド・ライトの影響を窺えるモダンな喫茶店の窓から、柔らかな真昼の陽光と深緑の街路樹が見える。

 今日は土曜日。毎週この日にわたしと親友の優月ゆづきは学校帰りにこの喫茶店に寄って帰る。クラスのみんなはそれぞれカラオケに行ったり、買い物に行ったり、真面目な子は図書館に行って勉強したりするのだろう。

 わたしはこの時間が大好きだった。何より、優月と話すのが楽しい。彼女はわたしとは比にならないくらい賢く、クラスでも成績はトップの座に君臨している。

 でも、まるで自分自身に興味がないかのように、「優月さん、頭良いね!」とか「優月さん、わたしにも勉強教えてよ!」とか言われても「わたし、そんなに頭良くないから」と一言で会話を終わらせてしまう。だから、クラスでもあまり印象は良くない。わたし以外に対しては。

 

 店内はとてもオシャレで清潔だった。モダンジャズのエモーショナルなピアノの音色が、ガラガラの店内で寂しそうに流れている。何の曲だろ、とか思っているうちに、注文したブラックコーヒーがわたしと優月の前に置かれた。

 装飾や模様一つない純白のカップに注がれた漆黒のコーヒーが、湯気を立てている。

 わたしは、いただきます、と呟くような声で言うと、ちびちびと飲んだ。

 焙煎されたコーヒー豆の風味が口腔に広がって、一週間の疲れが一気に吹き飛ぶ気がした。

 優月もコーヒーを飲んだ。そして、一口飲み終えて窓の外をぼんやりと眺めながら突然













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コメンテーター 水鏡宰 @winter-mute

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