ロベルタ、ざまぁ行使!

 ロベルタの転生先は、豪華な宮殿であった。

 だだっ広いテーブルを囲んで会食をしてるところであった。

「ぼーっとしていたが大丈夫か?」

 隣の金髪碧眼のイケメンが爽やかボイスで声を掛けてきた。貴公子服が良く似合う。純白の生地に金色の刺繍が映えている。

 ロベルタはにっこり微笑んだ。

「ご心配には及びませんわ」

「あーあーやな女ですね。そうやって男に媚びを売るのですから」

 イケメンの隣のいかにも性格悪そうな黒いドレスの女が嫌な顔をしていた。

 カラスの羽をつなげたような扇で自身をバサバサと仰いでいる。

「可愛いだけで偉い人とつながるなんて、最低ですね」

「気に入りませんわ。『ざまぁ』行使」

「何を言って……!」

 女が理解する前に、事態は進む。

 なんと女の椅子が勝手にすっころんだのだ。ドッターンという派手な音が響き渡る。

「こら! 何を遊んでおる!」

 高貴な赤いサーコートを身に着けたおじさんが、女に向かって激怒していた。おそらく国王だろう。

 女は顔面を青くしてブンブンと首を横に振った。

「い、いいえ。椅子がひとりでに動いたのです!」

「椅子のせいにするのか!? こんな無礼者は初めてだ!」

 女は泣いたが、おじさんは容赦しない。

「追放だ。二度と我が宮殿に入るな」

 女は警備員につまみ出された。

 ロベルタはにやにやが止まらなくなった。

「なんと素晴らしい能力ですわ」

「ロベルタ、なんてひどい事を!」

 いかにも金持ちの七光り系男子が指をさしてきた。宝石だらけの指と服がジャラジャラとうるさい。

「椅子に糸をくっつけて引っ張るとか、何か仕掛けをしたのだろう!? とんでもない女だ」

「そんなくだらない仕掛けなんてしませんわ。気に入らないので『ざまぁ』行使」

「はっ。なにがざまぁだ。この僕がざまぁ対象になるいわれなんて……!」

 七光り系男子の足元に通りすがりのバナナの皮が現れる。

 男子はみんなの期待どおり、盛大にすっころんだ。

「こら! 何を遊んでおる!」

 やっぱり一番偉いおじさんが怒鳴った。

「い、いいえこんなところにバナナがあるなんて知らなかったです」

「バナナのせいにするのか!? こんな無礼者は初めてだ!」

 案の定、男子はつまみ出された。

「もしかして、チートスキルか?」

 一番最初に話しかけてきたイケメンが口を開いた。

「実は僕も転生者でチートスキルをもらっている」

「あら、どんなスキルを?」

「『ざまぁ封じ』だ。僕にはどんなざまぁも無効化される。つまり、ざまぁ対象にならずにすむんだ」

「本当かしら? 悪役令嬢として試すところですわね。『ざまぁ』行使」

「『ざまぁ封じ』行使。ほら、何も起きない」

 ロベルタは全身をワナワナと震わせた。

「こんな悔しい想いをするなんて……!」

 言いたい事はたくさんあった。

 しかし、その口はイケメンの口にふさがれた。いきなりキスをされたのだ。

 イケメンはそっとロベルタを離す。

「僕のような性格のよいイケメンはざまぁ対象にならないんだ。それより僕と結婚しよう。婚約破棄なんて絶対にしないから」

「い、いきなり何を!?」

「あなたの美しさにほれた。『ざまぁ』を行使しているのを見るのは楽しいし」

「本当にあなたは性格がいいの?」

「性格がよくても、人間だ。嫌な相手はいる」

 イケメンは白い歯をきらめかせた。

「僕と結婚すれば何不自由なく暮らせる。『ざまぁ』と『ざまぁ封じ』でこの世界を牛耳ろう」

「素敵な提案ですわ! 前世に婚約破棄してきた男に対する究極のざまぁですわね」

 ロベルタとイケメンは無事に祝杯をあげた。

 二人の未来は眩しい光に満ちている。明るい未来が約束されたのだ。

 

 転生の間の元女神はどうなったって?

 女神職を解雇されて、ふて寝してますよ。

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婚約破棄されたので悪役令嬢に転生してチートスキル『ざまぁ』を行使いたしますわ 今晩葉ミチル @konmitiru123

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