ロベルタ、転生する

 ロベルタの魂は白い壁だけの空間に連れてこられた。

「ここは? 天国でも地獄でもないようですが」

「ここは転生の間。あなたはラッキーな事に新しい世界で生まれ変わるのです」

 解説をしたのは、頭の上に金色の輪っかを浮かべる少女であった。白いワンピースが可愛らしい。

「私は転生の間を司る女神です。懸賞に当たったあなたは、転生する権利を得ました」

「懸賞に応募した覚えはありませんわ。そもそも死んでしまったのに、ラッキーなんてありうるのでしょうか?」

「そ、それは……」

 女神は視線をそらしている。

 ロベルタは疑いの視線を向ける。

「私はまだ17歳でした。本当に死ぬべきだったのでしょうか?」

「そ、そんなの誤差のうちです。神の寿命は何千年とあるのでたまにはミスを……」

「理不尽にもほどがありますわ! ただ生まれ変わるのでは納得いきません!」

 ロベルタが女神に詰め寄ると、女神は汗だらだらになりながらワンピースのポケットを探す。

「ちょっと待っててくださいね。とっておきのスキルをプレゼントしますから」

「ポケットに収まるスキルなんて……!」

「ありました! 文字数が少ないためコンパクトに収納できましたが、チート級スキルです。その名も『ざまぁ』」

「どんな効力がありますの?」

「どんな相手にも『ざまぁ』ができます。気に入らない相手にじゃんじゃん使ってください」

 ロベルタは微笑んだ。

「ありがたく受け取りますわ」

「そ、それでは私はこれで。快適な転生ライフをお楽しみください」

 そう言って消えようとする女神だったが、なぜか消える事ができなかった。

 金色の輪っかが消えている。女神としての能力を失ったのだ。

 ロベルタが口に手を当てて笑う。

「さっそく『ざまぁ』を行使させていただきましたわ。女神にも効果があるなんて素晴らしいスキルですわね」

「そ、そんな。転生の間を司る女神としての能力を奪われるなんて、というより女神相手にスキルを使うなんて聞いた事がありません!」

「ほーほっほっほっ! ただの女として地べたを這いずり回るが良いのです」

「転生の間から出られないと地べたに辿りつく事もできないのですが……」

「細かい事はどうでもいいのですわ」

 ロベルタは白い壁に両手を当てる。

 ギギィと鈍い音を立てて視界が開ける。

 目もくらむような強い光が広がっていた。

「もう純粋無垢な私とはおさらばして、悪役令嬢となって好き放題いたしますわ。転生後は『ざまぁ』し放題ですわ!」

 ロベルタに恐れるものは何もない。

 意気揚々と強い光の中へ足を踏み入れた。

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