第20話 恋の華
そんな出逢いから数日、華菜枝は突然の吐き気と眩暈に襲われ広い屋敷の中、誰の救いも得られぬまま寒い部屋に独り蹲り苦痛に顔を歪めていた。
侍女達ですら不必要な存在とし華菜枝を扱いや嫌われ距離をおかれていた。
この時、華菜枝は身体の異変に敏感に察し身体の中で何か良からぬ事が起きている事に恐怖と不安で気が気ではなかった。
「華菜枝さん!!」
暁斗は部屋の片隅で小さく震え蹲る華菜枝にいち早くい気づき臆することなく近づき強く抱き締めた。
「·····どうして·····何故あなたが個々に?·····お願いっだから·····放っておいて!!」
どんなに彼を拒み拒絶しても暁斗は華菜枝の傍を離れなかった。
暁斗もまた、あの日から華菜枝に惹かれ、互いが互いを想い、その想いは紅く燃ゆる炎のように業火の如く燃え上がり、恋焦がれた心は自然と引き寄せあった。
華菜枝のどこか哀しみを帯びた瞳の奥に見えた、純粋で儚げな美しさ。その奥ゆかしさに心を鷲掴みにされた。
暁斗は心に誓った。『彼女を守りたい』と心の底から強く強く。どんな過酷な道が待ち望んでいようと、この運命の紅い糸で結ばれた2人なら生き抜いていけると·····そう思っていた·····思いたかった。
暁斗は華菜枝の頬に触れ真っ直ぐ瞳を見つめ愛の言葉を囁いた。その瞳に嘘も偽りも微塵もないことは一目瞭然だった。
その言葉が事実であると分かってるのに·····信じたい縋りたい·····愛されたいと心の底から願っているのに、彼を愛してしまってから醜い自分が嫌いで堪らなく嫌だった。だからこそ暁斗を、この結月家の呪縛から解放してあげたいと考えたのだ。
彼を思うが故に華菜枝は抗った。
抗い続けた。たとえそれが残酷な選択でも修羅の道になろうとも暁斗を愛せた事実だけを胸に生きようと思えたから。
「君が好きだよ」
何度も何度も心から囁かれるいとしい人からの愛の言葉――――。
その言葉だけで満足だった。華菜枝の心は満たされ今まで生きてこれたことに感謝するほどに――――頬が綻び心の底から『幸せ』だと叫びたかった。
「――――ごめんなさい」
それでも華菜枝は彼を拒絶した。遠ざけ自分とは関係ない。彼が勝手に自分へ想いを寄せてるだけだ。そう強く拒絶することで夢が目覚め自分と距離を置いて欲しいと願った。
どうか·····どうか誰も暁斗を傷つけないで――――彼は自分とはなんの関係もない·····逃げて·····逃げて!!涙が溢れた。
今までの自分は誰も信じず屍のように生きた。そんな人生が当たり前だったから。
人生でたった一度きりの運命の出会い。
「·····あなたもいつか必ず·····私を捨てるわ」
声が震えた――――。
かくれんぼ cherryblossom @cherry1619
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