第48話 第一部 エピローグ
本陣を飛び出し孫権は思う。
始皇帝は七つに分かれたこの広大な中華全土を束ね統一した。孫権の父孫堅は呉の国を建国し盤石にした。兄孫策は呉の国の領土を爆発的に広げた。
だが信長は、ものの三カ月で東南アジア全土と呉の国の南半分を統治してしまった。
ただ受け継いだだけの自分とは違う、信長は本物の英傑だ。
異国よりこの大陸に降り立った戦国の英傑……
「見極めさせてもらうぞ、織田信長!」
孫権の目には、一切の恐れが無かった。
◆
信長と光秀、そして蘭丸の立つ櫓の上。その柵に音も無く色香漂う美女が降り立った。
「おい信長! 五右衛門からの連絡だ、孫権が戦場に出たぜ」
武田忍軍頭領、戦国最強のくのいち、望月千代女である。
「そうか、光秀、蘭丸、出るぞ!」
「「はい!」」
◆
呉の西、蜀の国の首都成都の城。
そこでは蜀の軍師、諸葛亮孔明が蜀王劉備元徳に帰国の挨拶をしていた。
「劉備様。南蛮の平定が終わりました。孟獲王は最初は抵抗致しましたが、私が七度捕まえ七度とも解放すると力の差を理解し、降伏してくださいました。以後、蜀への進攻はせぬそうです」
「良かったですね兄上」
「これで曹操との戦に専念できるなぁ兄者!」
玉座に座る劉備の横では、五虎大将軍にして蜀最強と言われる関羽と張飛が機嫌を良くする。二人は劉備と義兄弟の契りを結んだ関係で、関羽が二男、張飛が三男だ。
「ありがとう二人とも、そして孔明、よくやってくれた。趙雲、馬張、黄忠、そなた達もこれから存分に働いてもらうぞ」
「はい、任せてください」
「曹操の首はオレがザックリ頂くから安心しな大将!」
「今から楽しみで私の腕が喜んでおりますわい」
「うむ、期待しているぞ、だが、魏との戦の前に気になることがある」
劉備が表情を曇らせる。孔明はすぐさま劉備の望む答えを用意する。
「日本でございますね」
「そうだ、やはりそなたの耳にも届いていたか」
「はい、なんでも東の海の向こう、極東の島国からこの大陸に渡って来たとか」
「島国ぃ? おいおいそんな連中が大陸の乱世に首突っ込んできてどうにかなるわけが」
「それがなっているのですよ、張飛将軍」
「え?」
張飛がマヌケな顔で驚く。
「彼らはものの三カ月で東南アジア全土、そして呉の南半分を手中に納めました。その軍事力は驚異的であり、間もなく呉は日本に降る事でしょう」
「最初は援軍を出そうかとも思ったのだが、悩んでいるのだ」
「彼らの統治ですね?」
「うむ、今は全世界の王が天下を獲るべく争い合い戦争を続ける時代。戦争行為そのものを責める気は無い。それに彼らが治めた地はことごとく民の生活は改善され、その治世は広く民草に愛されているという。もしかすると我ら同様、世界から争いを無くすべく戦っているのやもしれん」
劉備元徳は清廉潔白な聖人君子を絵に描いたような人である。
それが彼の弱点だが、その人徳故に彼の元には天下太平を望む本物の勇者達つどった。
もしも董卓のような圧政を強いるならば、劉備は軍師孔明無く、南蛮遠征軍に兵力を割かれている状況でも援軍を送っただろう。だが日本に統治された土地の民が喜び、各地の王も納得済みとの報告を聞けば、その気もなくなる。
「簡単な事ですよ、我が王よ」
孔明は柔らかい笑みを浮かべ、玉座の劉備を見る。
「日本が呉を落とした後、すぐに彼らと会談の場を設けるのです」
表情は変わらないが、孔明の長身から闘志が溢れだす。
「蜀の王と新しい呉王の会談、そこで魏の曹操を討つ協力を願い出るのです。そしてその会談で日本の王、織田信長殿の人柄を推し量りましょう」
孔明から湧きあがる闘志が膨らみ、その眼光に力がこもる。
「もしも我らと志を同じくする者であれば同盟を、そして董卓や曹操と同じ人種ならば」
孔明は肘を曲げ、手を上げるとゆっくり空気を握り潰した。
「五虎大将軍の武力と、我が全兵法を用いて叩き潰すのです」
孔明の口元に笑みが咲いた。
《配下にした王は中華を手にする・中華最大最優の軍師・諸葛亮孔明》
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作品解説した通りここまでです。
人気があったら本格投稿したいです。
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