9.大人も子供。








「ぜぇ……ぜぇ……!」

「あの、哲也さん。大丈夫ですか……?」

「ははは、年甲斐もなく全力になって……げほげほ!?」



 太鼓を叩くリズムゲームを全力プレイ。

 拓哉の父――哲也は大きく肩で息をして、恵梨香に介抱されていた。とても、御年四十二となる大人の姿ではないように思われる。

 これには妻も苦笑いを浮かべていた。

 しかしながら、哲也はどこか清々しい表情をして言う。



「でも、たまには良いでしょう?」



 恵梨香はそんな彼の笑顔を見て、目を丸くした。

 そしてすぐに、口元を隠して笑うのだ。



「ふふっ、それでも老いには勝てませんね?」

「老いとはひどいなぁ。でもまぁ、たしかに初々しさでは敵わないね」



 哲也が汗を拭って見たその先にいたのは、仲睦まじくベンチに座る子供たち。

 それを確認して静かに、そして安心するように笑った。



「二人はまだ、自分たちの気持ちに気付くほど大人ではないみたいですね」

「そうだね。今日を境に、とも思ったけど――」



 ――まだ、少しずつかな。



 その言葉を呑み込んで。

 哲也は、小さく息をつくのだった。そして――。



「よし! 今度はフルコンボ目指すぞ!」

「えええ!? まだやるんです!?」




 驚く恵梨香の顔を見て、また笑う。

 小園家の大人たちも、まだまだ初々しいように思われた。



 






――――

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