8.一緒に思い出を。
「……今さらになって、凄く恥ずかしく……」
プリクラから出て、俺は完全に燃え尽きていた。
何故ならこちらから義妹に抱きついて、それを写真として残してしまったのだから。きっと絵麻も嫌だったに違いない。
嫌われたのではないか。
そう考えていると、どういうわけか気持ちが沈んで仕方なかった。
「うがー!? どうして俺は、あんなことをー!?」
「お、お兄ちゃん!? どうしたの!?」
「え、絵麻!?」
俺が頭を抱えて吼えると、ちょうどそこに絵麻が戻ってくる。
目を丸くした彼女の手には缶ジュースが二つ。とりあえず座るように促され、俺は改めてベンチに腰かけた。すると義妹は、片方のジュースを手渡してくる。
受け取りつつ顔色をうかがうと、どうにも怒っている感じではなかった。
「あれ、怒ってないのか……?」
「え、どうして?」
「いや、だって……」
その時、タイミングよく手元からプリクラの写真が落ちる。
拾い上げようとすると、それより先に絵麻が動いた。そして、それを見つめて小さく微笑むのだ。
「えへへ。これで、野川さんに勝てたかな……?」
「瀬奈に? どうして――」
俺は彼女が言っている意味を理解できず、訊ねようとする。
だが、絵麻はこちらの言葉を遮ってこう言った。
「私ね、お兄ちゃんとの思い出が少ないのが寂しかったの」――と。
写真をきゅっと、胸に当てながら。
少女は本当に嬉しそうに、こう続けるのだった。
「だから、ちょっとだけ嫉妬してたのっ」
決してそれは悪いことではない。
そのことを、しっかりと理解したような表情で。
俺はそこでようやく納得した。だから、微笑み返して伝えるのだ。
「これから、作ればいいよ」
「……お兄ちゃん?」
写真を一枚、自分のスマホの裏に貼りながら。
「俺と瀬奈は幼馴染だから、仕方ないけどさ。絵麻と俺は、まだまだこれからだろ? だから、これから一緒にたくさん作っていこうぜ!」――と。
俺がスマホを見せると、絵麻は――。
「お兄ちゃん……!」
少し感極まったようにしてから、また満開の笑顔を見せるのだった。
「うんっ!」
そして、俺と同じようにスマホの裏に写真を貼る。
互いに見せ合って、俺たちは同じように笑うのだった。
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