2.帰宅後のハプニング。










「うー、寒かったな……」

「うん……! 帰り道、急に雪降ってきたし……!」



 日も暮れて、辺りもすっかり暗くなった頃合い。

 俺と絵麻はケーキショップから帰ってきた。しかしその途中、横殴りの吹雪に遭遇したのですっかり身体が冷え切ってしまったのだ。

 急いで暖房をつける。

 だが、このままでは風邪をひいてしまうだろう。



「うぅ、寒い……!」

「絵麻。いま風呂沸かしたから、先に入って来いよ」

「え、ホント? ありがとう。でも、お兄ちゃんは大丈夫?」

「気にするなって。男はともかく、女の子は身体冷やしたらダメだろ」



 そう思って、そそくさと風呂の準備を済ませて絵麻に伝えた。

 すると彼女はにこやかに笑って、こう言うのだ。



「えへへ、やっぱりお兄ちゃん優しいね!」



 そして、パタパタと自室から着替えを持ってきて脱衣所へ。

 俺はストーブの前に陣取って、しばし震えることに。絵麻が上がったら、俺も早めに風呂に入った方が良いのかもしれないな。

 そう思っていると、不意に――。



「え……?」



 ――パツン、と。

 家の中の電化製品がすべて停止した。

 まさかとは思ったが、どうやらこんな時に停電したらしい。俺は冷え切った身体をさすりながら、玄関の方にあるブレーカーのところへ。


 その途中で、



「……お兄ちゃん、大丈夫?」

「ん、絵麻。まだ入ってなかったのか」



 真っ暗中、義妹に声をかけられた。

 どこにいるかは曖昧にしか分からないが、とりあえず風呂に入る前だったらしい。不安げな声色で俺のことを呼ぶ絵麻は、ゆっくりと身を寄せてきた。



「あ、あはは。実は暗いの苦手で……」

「それで怖くて出てきたのか?」

「……うん」



 控えめに答えた彼女に、服の袖を掴まれる。

 こうなったら、早いとこブレーカーを上げてこなければ。お互いに凍えてしまうと、そう思った俺はやや早足に目的地へ。

 そして、爪先立ちでブレーカーに触れた。

 その時だ。



「わっ……!?」

「え、きゃ!?」



 先ほど帰ってきた時に雪が入ってきていたのだろう。

 思い切り足を滑らせ、その場に転がってしまった。したたか背中を打ち付け、思わず眉をしかめる。



「い、いてて……」



 だが、どうやら電力は無事に復旧したらしい。

 俺はゆっくりと、閉じていた目を開き――。



「………………へ?」



 思考が停止した。



「えっと、絵麻……?」

「………………えへへ」

「…………」

「…………」



 物凄く近い位置に、義妹の綺麗な顔。

 仰向けに倒れた俺に対して、絵麻が馬乗りのような形になっていた。しかも俺が声を失したのには他にも理由があり、現在の彼女は――。



「……あ。ご、ごめんね? ホントに怖くて、だから……!」



 明言は避けよう、兄として。

 とかく、途端に恥ずかしくなったのか、絵麻は弁明を始めた。

 俺はそれよりも、早くこの体勢を変えなくてはと思っていたのだが――。



「あの、絵麻。早くどいて――」

「ただいまー。元気だったか? 二人と……も?」

「あ……」



 その時だった。

 玄関の扉が開き、両親が帰ってきたのは。



「おやおや、これはこれは……?」

「二人ともすごく仲良しに……?」






 その後、誤解だと説明するまでかなり時間がかかるのだった。



 





 

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