3.まさかの提案。









 ひとまず絵麻を風呂に入れ、その間に俺と両親はリビングへ。

 先ほどの一件について説明したのだが、とかく二人は「分かったから」とか「仲が良いんだね」とか、本当に理解しているのか不明瞭だった。

 俺は大きなため息をつきながら、とりあえず今後のことについて話そうとする。だが、それより前に親父がこう言うのだった。



「そうだ、良いこと思いついたぞ!」

「…………は?」



 いやいやいや。

 そんな満面の笑みで言われても。

 息子としては、嫌な予感しかしない。そして、



「なんだよ、急に」

「二人はずいぶん仲良しになったんだろう? だから――」



 その予感は、見事に的中することになるのだった。



「明日はせっかくの休日だ! Wデートしよう!」――と。











 ――というのが、昨夜のこと。

 翌日の朝、俺と親父はなぜか一緒に駅前にやってきていた。

 鼻歌交じりに恵梨香さんを待つ父に対し、どうにも乗り気になれない息子の俺。どうにも、勢いに押されてしまった気がしてしまっていた。



「なぁ、親父。帰ってきたばかりで、疲れてるんじゃないのか?」

「なんだ、拓哉。父を心配してくれるのか?」

「…………いや、別に」



 やんわりと、中止の意を示してもこんな調子。

 俺は大きなため息をついてしまった。そんな時だ。



「お待たせしました」



 恵梨香さんの声が、聞こえたのは。



「やあ、待っていたよ」



 手を挙げた親父の視線の先には、よそ行きの格好をした義母。

 そして――。



「あの、似合ってるかな……?」



 可愛らしい服装の、絵麻の姿があった。

 先日あげたマフラーを首に巻いた彼女は、どこか恥ずかしげに微笑んでいる。そんな表情を見てしまうと、どうにも中止にするわけにはいかなそうだった。

 こうなったら、腹を括るしかなさそうだ。



「……分かったよ」





 俺はそう言って、自然と絵麻の手を取る。

 親父もそれに倣うようにして、まさかのWデートが始まったのだった。




 





――――

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