8.瀬奈の進路。









「やっぱり、冬休みは短いな……」

「ほとんど年末年始の休みみたいなもの、だからねぇ」

「それに補習で登校してたから、始業式に違和感しかない」

「あはは! たっくん、それ中学の時も言ってたよね!」

「お前は……そうか、部活で出てるのか」



 ――始業式前。

 俺は学校の廊下で、瀬奈と駄弁っていた。

 絵麻は学生代表の話があるとかで、すでに体育館へと向かっている。改めて義妹は学生の中でも上位の存在なのだ、と認識した。

 それはそれとして、一般生徒である俺たちは暇を持て余しているわけで。

 瀬奈はボンヤリとしながら、こう言うのだった。



「ねぇ、たっくん。そういえば、どこの大学行きたいんだっけ?」

「あー、そっか。そろそろ進路調査か」

「そだよー」



 雑談の延長ながら、ずいぶんと重要な話題が出てきたものだ。

 俺はそう考えながらふと、幼馴染にこう訊ねる。



「そう言う瀬奈は、もう考えてるのか?」



 高校受験の時、俺に頼りっきりだったコイツはどうなのか。

 何の気なしに口にしたのだが、返ってきたのは意外な言葉だった。



「ん、アタシはもう柊大学から誘われてるから」――と。



 それを聞いて、耳を疑った。



「柊大学、ってお前……!?」



 何故なら、瀬奈の言った『柊大学』とは全国屈指の名門私立大学だったから。

 そこから誘われているとは、いったいどういう意味なのか。訳が分からない俺は、完全に面食らってしまっていた。

 そんなこちらを見て、苦笑いしながら幼馴染は言う。



「あー、うん。ちょっと前に練習参加させてもらってね? ハンドボール部の監督さんに、是非きてほしい、って言われたんだー」

「それってつまり、スカウト、ってことか?」

「そ。特待生、だってさ」

「マジか……」



 驚愕の事実だった。

 たしかに瀬奈は昔から運動神経が良く、現ハンドボール部キャプテンを務めている。全国大会こそ出ていないものの、県大会準決勝までは進出していた。

 それで十分に凄いと思っていたが、まさかスカウトを受けるレベルとは……。



「たっくんは、どうするの?」

「……俺は、そうだな……」



 唖然としていると、瀬奈がこちらの顔を覗き込みながら訊いてきた。

 そこでようやく俺は、自分の進路について真剣に考える。

 そういえば、先日も同じようなことを――。



「あ、もうそろそろ移動だってさ! いこっか!」

「……そうだな」



 だが、その時。

 担任の先生がやってきて、集合をかけた。

 どうやら始業式が始まるらしい。俺たちは一度、そこで会話を切った。




「大学、かぁ……」




 俺はそこで思う。

 義妹の絵麻は、どこの大学を目指しているのだろうか――と。



 








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