第四十八話
「起きたら怒るかなぁ、リク君」
「それは、僕が教唆してしまったことなので」
「でも僕も最初は拒否したけど満更でもなかったんだよ、浅ましいことに」
「そうなんですか」
「君、リク君と共通点多いからね。似てないけど」
「一度会ってみたかったです。サエジマリク先輩」
「完全に修羅場じゃん、それ」
そうしてだらだらと喋りながら、でも相手の根本を救えるようなことは何も言えないままに空は赤らみ、紫へ、やがて黒へと色を変えていったけれど気にせず歩きつづける。
案の定すぐに見回りをしていた警官のおじさんに見つかって「お前ら何歳や。家出か。ホンマあほやろ、ここら別に治安良うないねんぞ」と方言で早口にまくしたてられるのに怯えながらいろいろと質問をされて「オカンとオトンには電話通じんのか。住所は? は? 関東から来た? 金ない? ふざけんのも大概にせいや」とごたごたとしている内に応援の若い警察官の人も来て、そのうち段々大事になっていくと僕らはそれぞれ別室に通されて二人はどういう関係だとか何でこんなところまで電車に乗って来たのかと根掘り葉掘り聞かれて数十分くらいしてようやく解放されたのだけれど僕だけが家族に来るまで迎えに来てもらうことを許されて、二度とウチダ君に会うことはできなかった。
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