第四十六話
僕ら二人の手持ちのお金を全部合わせてどうにか改札を出るとそこは近畿地方にある、駅名の読み方もよく分からないような場所だった。
「近くに海浜公園があるらしいですよ」
「行くの?」
「どうせどうしようもないですし、それなら」
「諦めるには早いと思うけど」
「僕が捕まったら先輩は警察に家まで送り届けてもらってください」
「そんな無責任な」
「先輩は何も法犯してないですし、何も知らなかったと言えば大丈夫なはずです」
「ねぇ、ほんとに諦めるの? 大事なことだよ、こんな」
言い掛けたところで僕は彼の表情がひどく青ざめていることに気付いてしまって本当にもうダメなのかなとか僕が電話を掛けて打ち明けさせたのだって何の意味があったんだろうかとかそんなことばかり脳裏に浮かんでしまうけれど何もできることがないのが腹立たしくて悲しくて。
「……じゃあさ、歩いて逃げようよ」
「え」
「どうせ逃げられないんだったらさ、いっぱい喋ったりしながらのんびり逃げようよ」
「夜が来たらどうするんですか」
「ネカフェ泊る?」
「お金使い果たしましたよ、電車で」
「バカだなぁ、僕も君も」
「で、結局どうするんですか?」
「寝ずに歩こうか」
「補導されてバレません?」
「案外いけるかもよ? 僕こんな見た目だし」
「先輩はいけるでしょうけど」
「僕の上着を貸してあげよう。フード付きだよ。これで顔を」
「それじゃ先輩寒いじゃないですか」
「もう夏も近いし大丈夫だよ」
「……ありがとうございます」
「彼シャツだね、いわゆる」
「違うと思いますけど」
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