第四十五話
「僕らは、どこに行こうとしているの?」
と訊いてみれば「猟友会とか警察から逃げるんです。なるべく遠い場所へ」などと答えるので「つまりノープランなの?」と詰めればあっさり認めて「まあはっきり状況を言うなら詰みですよね。僕一応日本国民なので、法律適応されるんです。まあ、罪に問われなくても病院か研究所に監禁されて検査されまくるんでしょうが」
「治療法とかはないの?」
「科学ガン無視ですからね。望み薄でしょう」
「……いつからなの」
「え」
「そうなったのは」
「えー。いつからでしょうか」
「クイズ?」
「違うんです。正直言って僕も分かんなくて」
「何で」
「僕が初めて人に危害を加えたのはおととしの春らしいんですよ」
「らしいって、まさか」
「記憶がきれいさっぱりないんです。ここ最近以外の。昨日両親とどんな話してたかは覚えてるんですけど、去年あったことは何も思い出せない。焦りました。正直言ってあれは、怖い」
「それは」
「多分僕、親より先輩との思い出の方が多いです。楽しかったですよ。勉強教えてもらったり、演劇のお手伝いしたり。でも、調子に乗り過ぎました。どうしても怪獣の姿に変身してしまいそうな時は、いつもは県外に行って発散してたんですが、先輩と遊ぶのが楽しくって、おろそかになってしまいました」
「……ごめん」
「あやまらなくっていいんですよ。先輩は悪くありません」
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