第四十話


 文化祭も終わって一緒に帰ろうと思ってウチダ君のいる二年四組に行ってみたのだけれど何だか人だかりができていてどうしたのだろうと怪しめば「あ、シュント先輩だ! あの、すみません、カズミのことお願いできますか」と知らない子たちに殺到されてびっくりした。


「これはどういう……」


「いや、何かカズミ体調悪いみたいで……。保健室行けって言ったんですけど先輩と入れ違いになったら困るって聞かなくて」


「え」


「とにかく、お願いします。――おい、カズミ、起きろ!」


 まるで何か痛いのに耐えているような様子で蒼白な顔をしているんだけれどどうすればいいか分かんなくなって「どうしたの!? 保健室行く?」なんて意味もなく訊いてしまったんだけれど「すみません。途中まで連れてってくださったら、後は自分で何とかするので、すみませんけど、お願いしていいですか」なんて言われたものだからその通りに従うのが一番いいだろうと肩を貸しつつ校舎を出て、誰かにぶつかったりなんてことがないように辺りをきょろきょろ見回しつつ彼の家の方へと向かっていく。

 公園の前まで着いた時、ウチダ君は「ありがとうございます。家、ここの近くなんで。もう大丈夫です。先輩は先帰っててください」などと言うけれど本当にそれでいいのか確信が持てなくて尚も付き添おうとしたけど「早く行ってください。しんどいんで。すみませんけど、さっさと行ってください」と放つ冷たい声色が怖くなって、「ごめん」とだけ残して僕は逃げるように帰ってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る