第三十八話


「あ、あれミナミ先生のクラスの屋台ですね」


「ほんとだ。行こう行こう」


「ドーナツ売ってますね。先輩何味にします?」


「アールグレイ」


「紅茶好きですね」


「うん。ウチダ君は?」


「チョコにします」


「わぁ、三百円以上の買い物でミナミ先生との握手券だって」


「要ります?」


「要る。演劇部はミナミ先生を推すのが昔からの伝統なんだよ」


「え、何年いらっしゃるんですか」


「かれこれ九年」


「長いですね……」


「僕アールグレイ二個買うよ。丁度三百円……先生! 握手しましょう握手」


「オオヤマ、お前もか? さっきイズミが三千円分くらい買い占めて行ったんだが」


「クラスの子に配る気ですね」


「あー、じゃあ、僕も二つ買います。ミナミ先生、よろしくお願いします」


「正直言ってウチダは興味ないだろ? こういうの」


「でも、お祭りですし、やっといた方がいいかなって」


「こうして俺は安売りされるんだ」


「先生」


「なんだ?」


「イズミさん様子どうでした?」


「は?」


「あの、なんかイライラしてたとか、ないですか?」


「あいつは切り替え激しいタイプだし、俺では分からん」


「そうですか」


「台詞飛んだの気にしてたのか」


「それとは別の件なんですけど……」


「訊いてほしくない、と?」


「はい」


「そうか。なら訊かん」


「ありがとうございます」

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