第三十六話


 イズミさんから逃げるように「屋台のシフトがあるから」と荷物をまとめて自分のクラスに戻ると休憩してたり色んな店を回った戦利品を整理している子たちの中に文化委員の子がいたので何を担当すればいいか尋ねれば売り子をやっておいてくれと言われたので階段を降りて校舎を出ると見慣れた顔のいる焼きそば屋のテントに入ってエプロンと三角巾をつける。


「お、オオヤマ来たか」


 女子からの「確かサカタ君、オオヤマ君と仲よかったよね」という言葉によって接客のやり方を彼に教わることになったんだけれどちゃんと挨拶ができて引き替え券のカウントができたら構わないということですぐ終わってあとは二人で淡々とチケットを受け取って商品を渡してを繰り返しながら時折ぽつぽつと言葉を交わす。


「見たよ、劇」


「どうだった?」


「うまかったけど、似合ってなかったな」


「あれ、リク君の役だったからね」


「でも全体的にはよかったよ。お前も、お前んとこの後輩も凄いのな」


「ありがとう、嬉しい」


「結局来なかったな、リク」


「まだ昏睡したままだからね」


 僕とサカタ君の接点なんてリク君くらいしかないのだけれど会話しようとすると自然とその話題に流れて行ってしまう訳で。


「俺、黙ってた方がいいかな」


「ううん、大丈夫。あの時は僕が勝手に不安定になってただけだし」


「リクにさ」


「うん」


「修学旅行の班とか一緒になったらお前のこと頼むって言われてんだよ」


「そうだったの?」


「おう」


「……そっか。ありがとう」


「愛されてんだな、お前」


 今になって湧き上がりはじめた罪悪感に戸惑う内に来ていたお客さんに気付かず隣から「ほら、接客」と言われてようやく慌てて笑顔を浮かべて応対する。

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