第三十三話


 サエジマ家の食卓にお邪魔してもお母さんとお父さんに当たり障りのない慰めを言えるようになるくらいには回復したしリク君への背信がバレない程度には平常を装えているとは思う。


「今月は意識不明者1300人って」


「もうそろそろ合計で六桁行くんじゃないか」


「しかも最近ずっとこの県じゃない、出没」


「そうだな」


「病床ももう足りないってニュースでやってました」


「県外の方に運ぶしかないんでしょ、遭遇しても」


「シュントくん、文化祭大丈夫?」


「まあ、うん。多分。被害が多いって言っても区が違うし」


「もう練習のほうは済んだのか」


「はい。ゲネプロも早めにできたので」


「げねぷろ?」


「場所も衣装も本番通りにやる練習です」


「リハーサルみたいなもんか」


「まあ、大体そんな感じです」


「新しく入ってくれた子はどうなの? ほら、ええと」


「ウチダ君」


「頑張ってくれていますよ。台本に付箋をペタペタ貼ったり、機材操作の練習をしてくれてます」


「よかったわね。うまくいきそうで」


「はい。ありがとうございます」


「ねえねえ。入場券、無茶を言ったとは思うけど、よかったの?」


「ん?」


「ほら、四人分」


「いいのいいの。お客さん多いのは吹奏楽部の演奏始まってからだから。リク君も、起きたらほとんど終わってる挙句見にもいけない、ってなったら嫌じゃん」


「そうだね」


「うん」


「ありがとう」

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