第三十話
もう今日はへとへとになってしまって行きたくないなあと思いながら特別棟の階段をのぼって見慣れた部室に入るといつものようにジャージに着替えて柔軟体操や発声をして演技の練習ができるように片づけをしている内にクラスの用事を終えたイズミさんやウチダ君が来たので職員室に先生を呼びに行って稽古を始めればちらちらと合う目が気になってミスばかりしてしまう。
下校時間が来て陰鬱なまま帰ろうとするのを追いかけてくる姿から逃げようと駆け出しても鞄に詰めた教科書や体操服が邪魔ですぐに追いつかれて手首を掴まれるのがもどかしくて頬の裏を噛む。
「先輩」
「離して。離してってば!」
「信号、赤ですよ」
「え」
見れば自動車やトラックが流れるように横切っているので視野狭窄の余りもう少しで轢かれるところだったんだと思うと怖くて情けなくて。
膝から崩れ落ちるとすっかり血の気が引いてしまったのか凍える唇を動かして口にする。
「……リク君、僕もう耐えられなさそう」
「どこか休めるところに行きましょう」と促されて助け起こされたり背筋をさすられたりしながらやっとの思いで向かったのは少し前彼と一緒に来たことのあるコーヒーチェーン。
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