第二十九話


 翌日やっとの思いで登校した僕はお腹がきりきり痛くて胸が息切れのように激しく脈打つのを覚えながら日中を過ごしていたのだけれど呑気にも休み時間の間話しかけてくるのはサカタ君で彼はどうしても訊いてほしくないことばかりを聞いてくる。


「でさ、リクがな――」


「もう、黙って。聞きたくない」


「え?」


「ごめんけど、聞きたくない。ごめん、本当に。でも、言わないで」


 とても視線を合わせられなくて俯けば俯くほど彼の瞳が厳しいものになっていってしまっているのではないかという恐怖に囚われてしまう。


「こっちこそ、ごめんな。オオヤマの気持ち考えてなかった」


 違うこれは僕の不誠実に揺らいでしまった僕の八つ当たりでしかないのにだなんて言えなくてしてしまった沈黙をこのクラスメートはどう受け取ったのだろうかその声色はどんどんと心細げなものへと。


「俺さ、他のやつらがみんなリクのこと忘れたみたいにしてるのが、嫌で」


「……」


「だから、オオヤマがいてくれて、だから、あいつは忘れられていないんだって思うと、嬉しかった」


「うん」


「でも、それって、つらいこと思い出させて苦しめてるってことだもんな」


「ううん。そうじゃなくて」


「本当に、ごめん」

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