第二十八話


 もうこうなってしまえばどうしてここにいられるだろうと部活も放り出して逃げ出した先は幼馴染の恋人が眠る白い病院。

 もうそのころには走るほどの気力もなくなってしまったせいで泣くまいと思っても甲斐なく落ちる涙に頬を濡らしつつ重たい二本の脚を交互に前に出しながら階段を上っていく。


「リク君」


 ああ戸を引いて見えた君の姿は何も変わらず青ざめたままで僕はどうすればいいのか訊いてみたところで答えは帰ってこないだろうと思うとますますこぼれ落ちるのは涙。


「助けて、助けてよ……」


 彼が起きることはもうないだろうしもしあったとしてもその頃には僕はいったい何歳になっているんだろうかという類の不安が脳裏に過ればウチダ君に誘われたきっと誰も幸せになれないであろう提案に占められてしまう。

 病衣を掴んで濡らすことも厭わずに僕は必死に語り掛ける。


「起きて、助けてよ」

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