第二十五話


「――シュント先輩は、その、サエジマ先輩と付き合ってたんですか」


 スピーカーやらサンプラーやらを設置してウチダ君の音響操作の練習の準備をしていると急にそんなことを言い出したので心臓が縮むような気さえしたけれどなるべく平静を装って答える。


「何で全学年に知れ渡っているのかはともかく、そうだね」


「イズミさんが教えてくれました。先輩の彼氏がサデュザーグのせいで意識不明だって」


 こういう話は奇異の目で見たり気持悪がってくる人がいると嫌だから説明が必要な場合の他は自ら進んで言わない方が身の安全のためだろうと思っていたのは僕だけなのかリク君もミウちゃんもイズミさんもみんながみんな言い振らすのは何なのか。


「寂しく、ないんですか」


「寂しいに決まってるじゃん。じゃあなんで毎日そんな呑気に暮らしてるんだ、って聞きたいの?」


「いえ、そういうわけじゃ」


「ああもう、何だよ『サデュザーグの角の音を聞くと、心を奪われて目覚めなくなるんです。恐らく、目覚めたとしても』って。何で起きないのかな。そりゃ僕だってつらいよ。でも他の人といる時までうじうじしてるわけにはいかないじゃん。だって」


「ねえ、先輩」


 ――僕と、付き合いませんか。

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