第二十二話


「ここ最近ますますサデュザーグの出没が増えています。警察の方も見張りをしてくださっているので決して迷惑を掛けないように。まず何よりも身の安全を考えなさい。用事があっても無茶だけは絶対にしてはいけません。無茶と無理と言うのは意味が違うんですから――」


 マユズミ先生が一度喋り出すとホームルームだろうが何だろうが最低でも五分は止まらないものだから何人かは無視して単語帳やら参考書を開いているのだけれど僕はちょうど先生と目が合いかねない位置にいるものだから頷いたりしつつ聞くしかなくて終わる頃にはどっと疲れたような気分になってしまう。


 ちょっと目を瞑ったり肩を回したりしようかしらと思っているとサカタ君が近づいてきたのだけれどどうも気付かれないように後ろに回りこもうとしているようでじゃあこの前のはわざとだったのかと。


「サカタ君」


「何だ?」


「いや、用事でもあるのかなと思って」


「おう。あるぜ」


「うん」


「劇、どうなんだ?」


「うん。どうにか人数集まりそう」


「そっか。リク、楽しみにしてたから、気になってさ」


「へえ?」


「お前とできる最後の舞台だから、頑張るって」


「……そっか」


「来たのってどんなやつなんだ?」


「この前言ってた後輩」


「古文のか?」


「そう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る