第二十話
「シュント君、ごめんね。お母さんも結構参ってるみたいで」
帰り際、家はすぐ隣なのにわざわざ外まで見送りに来てくれたミウちゃんは扉を閉めるとそう言ったんだけれど参っているのは僕も同じで遅かれ早かれ誰かがそういうことを口にしてしまうんだろうとは思っていたからそんなに申し訳なさそうにしなくていいのにと感じた。
「いいよ、全然。僕もロクなこと言えなくてごめん。本当ならもっとお母さんを安心させてあげられるようなこと言えたらよかったんだけど」
「そんな! シュント君は悪くないよ」
「ハルコさんだって悪くないさ」
「……そうだよね。どうすればいいんだろう、私たち」
「本当に。リク君がさっさと起きてくれさえしたら全て解決するんだけどね」
「ふふ。お兄ちゃん、急がないとシュント君のこと取られるかもしれないのに、呑気が過ぎるんだから」
「もう。その話はよしてよ」
「やめませーん。これで一週間はシュント君をいじりつづけれる」
「そんなぁ」
思わず出てしまった情けない声にミウちゃんが噴き出したのにつられて僕も笑ってしまうんだけれどさっきまでの嫌な雰囲気が少しだけ軽くなったような気がしてわずかに覚えるのは安堵。
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