第十六話
玄関を開けると四十半ばくらいの女の人がちょうど靴に右足を入れたところに出くわしたのだけれど、そういえば僕の母親はこんな顔なんだったけなと思いながらスマートフォンを手に持ったままこちらを見ようともしない彼女に声を掛ける。
「ただいま」
「うん」
「今日はリク君ん
「そう」
「父さんは?」
「先に行った」
「そっか」
「うん」
「いってらっしゃい。あと、気を付けてね」
「……いってきます」
二人が必死に働いてくれているおかげで私立も含めて大学を目指すことができているんだし毎晩コンビニ弁当を買うためのお金の源だってそこなんだから不満を持とうという気にはなれないんだけれどもこの女の人の姿が僕の幼い頃の記憶に残っている母親の笑顔とどうしても重ならなくて戸惑ってしまう。
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