第十五話


 ミウちゃんが持っていた荷物を半分手伝いながら僕らはうねうねとした坂道を下っていくのだけれどもう人通りも少なくて、もうこんな時間だなんて明日学校起きれるかなと心配になる。


「そういえば、後輩ってイズミさん? あの人頭いいもんね。逆にシュントくんが教えてもらってたりするの?」


「ううん、イズミさんじゃないよ」


「え?」


「ウチダ君って子。文化祭の準備で知り合ったんだ」


「……男? まさか、浮気?」


「違うよ。普通に勉強してただけだし。それに僕がリク君と付き合ってるのはリク君個人が好きだからであって男が好きなわけじゃない」


「ほんとかなぁ? シュントくんチョロいからなぁ、心配だなぁ」


「そんなことないってば」


「怪しいなぁ。本当はイチャイチャしてたんじゃないのぉ?」


「ああもう、なんでそういう思考になるかな」


 そんな風にじゃれ合っているうちにやがて僕らの住んでいるアパートの薄く丹色に塗られた壁が見えてきたので何だか次の話題を出すのも引き留めるようで良くないなという気がしてはばかられたせいで少しづつ口数が減っていくうちに部屋の前に着いたのでミウちゃんが「それじゃあ、また三十分後くらいに。楽しみにしててね、牛鍋」と言うのに「うん。楽しみにしてる」と返してひとまず別れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る