第十二話


「そこは連体形だから、被修飾語が省略されてるだけなんだよ。連体形って基本、体言にくっつけるための活用じゃん。だから」


「あ、あー! じゃあこれ髪の毛剃ったのって帝なんですか」


「まあ、そうだね」


「ずっと藤原がボウズになったんだと思ってました……」


 ひと区切りついたので紅茶を啜り、アップルパイをまた切り崩して口に運ぶと冷めてしまってはいたもののずっと問題文にかじりついて火照っていた体にはかえって心地よい。


「先輩はこの科目が得意、みたいなのあるんですか?」


「古典と英語……それから公民かなあ」


「先輩頭いいですもんね。僕はぜんぶ苦手です」


「頭いいとかそういうのはないよ。僕はウチダ君より一年長く勉強してるだけだからさ、真面目にやってればそのうち伸びる」


「そういうもんですかね」


「そういうもんだよ。文化祭準備でこんな大変なのにサボらずに頑張ってるんだから、きっと大丈夫」


 それを聞いた途端ウチダ君が居住まいを正して「今日はこんな時間まで付き合ってくださってありがとうございます」とお礼をしてきたのが面白くなくて、そういうつもりで言ったんじゃないんだけどな、と心の中で呟いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る