第十話


 部活が終わったらウチダ君のいる二年四組に寄って彼を回収しなければならないんだけどクラス発表に使うらしい巨大なダンボールの上に忙しそうに絵の具を重ねながら他の子に指示を出しているのを見かけて話しかけるのが躊躇われてしまう。


 適当にそこらの地べたに荷物を置くと少しずつ進めていた古文の問題のつづきを解き始めるのだけれどけっこう難しくて時間が掛かってしまい、彼に声を掛けられるまでずっと気が付かなかった。


「シュント先輩。終わりましたよ、待っててくださってありがとうございます」


「……あ、うん。行こうか」


 教材をちゃちゃっと学生鞄の中に詰めなおすとそっと手を引かれたので別に逆らうつもりもないからと従うように歩いていきながら見える彼の身長はちょうどリク君と同じくらいなんだなと気付いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る