第七話


「シュント先輩」


 声出しも終わったので部室のごたごたしたものをどかして芝居の練習をするスペースを作っているとイズミさんが前屈をしながら話しかけてきたものだから僕も片づけをしつつ返事をしている。


「何?」


「急に起きたりしませんかね、リク先輩」


 一通り柔軟を終えて立ち上がった彼女の足には長くて細いわりになんだかずっしりとした雰囲気があるのでしっかり立っているという感じがして、以前、彼女は舞台に出るとよく映えると先生が言っていたのを思いだす。

 後ろで一つにくくった髪の毛が力を抜こうと首や肩を回す度にさらさらとジャージの生地を滑っているのを見ながら僕は500Wの灯体を持ち上げて言う。


「今から起きたって間に合わないよ、文化祭」


「せっかく台本当て書きしたのに」


「イズミさんはさ」


「はい」


「サデュザーグってどんなのだと思う?」


「どんなのでしょうねえ」


「リク君は僕よりあいつがいいんだ。だからずっと眠ったままでいる」


「無茶言いますね。まだ誰も意識戻ってないんでしょう? たぶん仕方がないんですよ。いくら愛の力があったって」


「そうだけどさ」

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