第六話


 六時間目までの授業が終わるなり掃除もないし他に用事もないので特別棟の階段を上って演劇部の部室へと向かうのだけれどいつ見たって大道具の部品やら裏方の機材やらで埋め尽くされているせいで狭い。

 今日もこれらを全部どかさないといけないのかと思うと気が遠くなるけれどだからといってさぼるわけにもいかないの取り敢えずジャージに着替えて柔軟体操を始める。


 今年の文化祭が僕とリク君、そして二年のイズミさんにとっての最後の発表となるはずだったんだけれど主役のはずの幼なじみが現在意識不明の状態なので当日ちゃんと開演できるか分からないままに書類だけ出して練習をしてはいるものの舞台で演技するのに二人、音響と照明の方に一人ずつ部員を割かなければいけないので絶対に足りないだろうから他の生徒に頼んで裏方を手伝ってもらいなさいと顧問の先生に言われてクラスの人を誘ってはみたものの大抵みんな既に予定が埋まっている。


 ストレッチを終えて発声練習に入り「あめんぼ赤いな、あ、い、う、え、お」とか「拙者親方と申すは」とか言っている内にイズミさんもやって来て更衣室の方に消えていったと思うと驚くほどの速さで着替えて戻ってきた。

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