第三話


 目が覚めてスマホの時間表示を確認すればもう五時半、大急ぎで用意を済ませて駅に向かわなければ電車に乗り遅れてしまうと朝食も口にせずに身だしなみだけ整えて 玄関を出るとミウちゃんが隣の号室から顔を覗かせる。


「おはよう、シュントくん。もう行くの?」


「電車で一時間半くらい掛かるからね」


 ミウちゃんはリク君の妹なのだけれど兄が意識不明になってからはしきりに僕のことを気に掛けてくれていて彼女曰く「だってシュント君、お兄ちゃんがいないとズボラもズボラのダメ人間じゃん」とのこと。


「今日は代わりに私が起こそうと思ってたのに」


「今起こされても困るよ。間に合わない」


 行ってくるねと手を振りながら駆け出せば転びそうになったので慌てて体勢を立て直して道路へと出るともう小学生やら散歩のお年寄りやらの姿がまばらに見えるのでこれは本格的に急がないと遅刻するぞと上がってきた息のまま坂を下る。

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