第2話 味のしないナポリタン
大抵の大学生は4年生になると
残り僅かな卒業単位を取るためだけに大学へ通う。
私もそうだ。月曜日はたった1コマのために
大学へ通っている。午前中の講義を終え、
これから騒がしくなる前に食事を
済ましてしまおうと食堂へ来た。
私の向かい側には恋人の一が座っている。
一はいつもハンバーグ定食を食べる。
この味を将来家庭の味にしたいらしい。
そういえば、ミチヨもよくハンバーグ定食を食べていた。私はナポリタンをすする。
味は元々薄めだが今日はいつも以上に味がしない。
頭の中に出てくるミチヨが食べている
ハンバーグ定食の香りの方が強く感じるぐらいだ。
一「どうした? 元気ないな」
零「…」
一「なぁ? 聞こえてる?」
零「ごめん。ボーッとしてた」
一「考え方?」
零「今日、ミチヨの命日だから」
一「そうか。ちょうど1年前か」
零「…」
一「大丈夫?」
零「ごめん。今日はもう帰るね」
一「帰るって今さっき合流したばかりだろ」
零「ごめんね」
味のしない食べかけのナポリタンを持って立ち上がる。一には悪いけど今日はミチヨの事で
頭がいっぱいだ。
ミチヨの実家に行けばあの日のことを思い出せるかもしれない。
私はミチヨの母親に電話をかけた。
繋がらなかった、
というよりその番号は使われていないようだ。
実家に電話をかけると父親が出た。
多い時には週に3〜4日ほどミチヨの家に通っていたこともあり、ミチヨの両親とも仲良しだった。
私はミチヨの実家へ向かった。
姑獲鳥の子 @fantasytaro
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