姑獲鳥の子
@fantasytaro
第1話 路上参り
アスファルトに花が咲いている。
根を固められてしまっても、枯れることなく
心地の良い風になびかれている様子を見ていると、それに比べて人間は
なんて脆い生き物なんだろうと思う。
人の命の脆さを知ったこの場所に、
私は1年ぶりに訪れた。
ここで私は四村ミチヨを失った。
少なくとも私にとっては親友だった。
先ほどまでお店で咲いていた
綺麗な花を電信柱の下に添える。
原因は車の事故だ。
助手席に乗っていた私だけが生き残った。
グチャグチャになったミチヨの身体はもう元には
戻らなかったが、電信柱は元に戻っていた。
手を合わせて目を閉じる。
あの時の記憶の欠片が頭の中を引っかく。
「あのさ、零」
「何?」
「あの日のこと本当に覚えてない?」
「ミチヨと神社に行った時のこと?」
「うん」
「覚えてない。ううん、思い出せない」
「あのね零、私…」
「ミチヨ、どうしたの?」
「ごめん!」
ミチヨは壁のある方へハンドルを思いっきり切った。その瞬間、真っ白なインクが視界を覆った。意識が戻った頃には病室だった。
目を開けて、立ち上がる。空を見上げる。
なんとなくミチヨがいる気がした。
ミチヨは私と心中しようとしていたのか、
それとも自殺しようとしていたのか。
たった4年の付き合いでは、自ら命を絶とうとしたミチヨの心情を理解することはできなかった。
「どうしてあんな事を…」
ミチヨと私は、あの日から時間が止まったままだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます