第60話 エピローグ
目を覚ました私は、お医者さんから話を聞いた。
由佳は私の隣を離れようとしなかったけど。
アローニでは一ヶ月以上いたような気がしたけど、現実では1週間程度意識がない状態だったという。
なるほど、そこはシーナさんが言ったとおりだ。
不幸中の幸いにも、ケガ自体はそこまでひどい物はなかった。
だが、筋力は結構落ちていて、私はしばらくリハビリが必要だと診断を受けた。
退院してからも、リハビリの日々。
必死になってリハビリをし、合間で勉強をする。
リハビリの間、ずっとサポートをしてくれていたのは、由佳とシーノだった。
アローニで資格を取れていたから、少し自信をもって試験にも挑むことになった。
アロマテラピー検定はあっさりと回答を埋めることができた。
私は試験の日の夜、ロニーたちに手紙を書いた。
【自信を持って、試験を受けてこられたよ。今までいろんなことを教えてくれて、本当にありがとう! 試験の結果が出たら、そっちに行って報告したいと思うよ】
要約すると、こんな感じで書いた。
ロニーたちはどう思うだろうか。
私は少し楽しみだった。
言われた通り、鍵を手紙の上に置く。
「姉さーん! ご飯だって」
「うん、今行く」
私は由佳に呼ばれて台所へと移動する。
戻ってくると、手紙は無くなっていた。
どうやらアローニに転送されたようだ。
そして、おおよそ一か月後。
試験の結果が届いた。
私は思い切って、由佳を誘ってアローニへ行くことにした。
「本当に行けるの?」
「うん、大丈夫なはず。」
母には、友達のところへ泊ると言っておいた。
「行ってくるね!」
「いってらっしゃい、二人とも」
私は空に鍵をかざす。
「さあ、行こう。手を繋いで」
「うん!」
私と由佳は手を繋いだまま、現れた扉を押した。
そこに広がるのは、だだっ広い草原。
ロニーと初めて会った場所だ。
私はすぐにそう思った。
丘を登った家のチャイムを鳴らす。
ずっと暮らしていた、ロニーの家だ。
「はーい!」
いつも聞いていた懐かしい声。
「いらっしゃい……あら! 楓香!」
私はレイチェルに笑顔を向ける。
「妹の由佳だよ、よろしくね!」
「やあ、楓香。久しぶり。彼女が由佳か、よろしくね。」
「ええ、よろしくね」
二人は由佳も受け入れてくれた。
「試験はどうだった?」
「もちろん、合格よ」
私は試験の結果である【合格証】をロニーとレイチェルに堂々と見せた。
私たちは一晩、語り合う。
お互いの事、仕事の事、アローニの情勢などを。
予定通りロニーの家で一泊して元の世界へと戻る。
それから何か月かアローニには戻らず手紙でやり取りだけをした。
そして約束の時。
「祭典かぁ」
「お祭りみたいなものよ」
ロニーから届いた招待状を手に、私と由佳は【祭典】へと向かった。
≪完≫
Regno degli aromi 金森 怜香 @asutai1119
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
香りに誘われて/金森 怜香
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
生け花日和/金森 怜香
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます