【SS】隣の席の変なやつ

枝折(しおり)

隣の席の変なやつ

小学校で隣の席だったカズキは、コンパスで机に開けた穴に鉛筆を突き刺して、周りに数字を書き込み、日時計を作っていた。

座席が変わると日の当たる向きが変わるので日時計は狂う。

だから席替えのたびに数字の位置をずらして作り直していた。

黒板の上にちゃんとした時計があるのにな。 


変なやつは虐めたくなる。

ある日カズキがトイレに行った隙に、机に刺さった鉛筆を抜いてやった。

ついでにコーラの香り付き消しゴムのカスを丸めて空いた穴に詰めてやった。

席に戻ってきたカズキは、壊された日時計と穴に詰められた消しカスを見て、俺を見た。

怒るわけでもなく、憐れむように。


その日から、俺は何だかちょっとだけおかしい。

炭酸を飲むと、時間が異常に早く進んでしまうのだ。

気づかぬうちに2〜3時間は過ぎている。

コーラを飲んだ日なんて、気がつくと5時間も経っている始末だ。

その間の記憶はなく、俺が何をしていたのか知るすべもなかった。


仕方なく俺は炭酸を飲むのをやめた。

まあ、別にたいしたことじゃあない。


新社会人になった今、俺はうっかりやらかしたみたいだ。

「最初はビール」にノセられて、意気揚々と飲んでしまった。

気づけば飲み会は終わっている。

上司、先輩、気になるあの子が俺を見ている。

気まずそうに、憐れむように。


「変なやつ」になる呪いはまだまだ解けてくれなさそうだ。

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