何も起こらないお話です。でも、泣きました。
美しい思い出があって、その上に静かに時間が積もっていく。物語のキーパーツであるスノードームと、穏やかな主人公の人生が、美しい暗喩によってリンクして、音の無い街に雪が降り積もるのを眺めているような、安らかで厳粛な気分になります。
何もしなかったことの後悔の方が、したことの後悔よりも強いと聞きますが、多くの人は、した後悔よりもしなかった後悔の方が多いでしょう。でもこの物語に触れて、しなかったことの後悔があっても大丈夫だと思えるのです。
そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。結局なにもわからないし、やったことは自己満足にすぎないのだけれど、そんな人生があっても良いと、穏やかな気持ちになれました。